スシロー「デジローで好調」に見る回転ずしの変容 回らないように変化してもワクワク感は増している
一方、価格面での魅力だけでない店舗空間の工夫をしているのも確かだ。実際、はま寿司はスシローと似たようなデジタルサイネージ上ですしが回るシステムを一部店舗に導入。スシローと同じく何が流れてくるのかわからない「ワクワク感」を提供している。
逆にくら寿司は、あえて「アナログ」にこだわって人気を集める。デジタル上ですしを流す2社に対し、いまだに本物のすしをレーンに流す。また、SNSを中心に大きな反響を集めた「プレゼントシステム」は、客の誕生日などに合わせておもちゃと共にケーキなどがレーン上に流れてくるもの。
こうしたサービスを提供する背景には、くら寿司の社長・田中邦彦氏の「くら寿司が目指すのは、ただのレストランではなく食のテーマパークである」という思想があるという(「くら寿司「1000円ホールケーキ」一体なにが凄いか」)。まさに「空間」的な魅力を訴求している。
こうして見ると、大衆的な回転ずし店が好調な理由の1つは、回転ずしの持つ「ワクワク感」への訴求を各社がそれぞれのやり方で詰めているからではないか。それによって、顧客のリピート率やコミットメントを高め、飽和する市場の中でも拡大傾向にあると考えられる。
市場の飽和に対応する回転ずしの今後
物価高や市場の飽和はどの業界でも、いつの時代でも起こりうることだ。事実、飲食業界の他業態でも市場の飽和は起きている。その際に重要なのは、それぞれの業態のどんな部分が顧客への訴求力になるのかを考えることだ。
回転ずしの場合、その1つが「何が流れてくるかわからないワクワク感」にあっただろう。特に「根室花まる」や「トリトン」「銚子丸」のような地場の食べ物にこだわった回転ずしが登場している現在、大衆的な回転ずし店の1つのポイントはその「ワクワク感」にあるだろう。
各3社ともデジタル/アナログの差はあれど、その「ワクワク感」にリーチをしている。現在の回転ずし各社は、その楽しみにフォーカスして市場規模を伸ばそうと切磋琢磨している状態だ。回転ずし業界の中でこうした競争がどのように変化していくのか、注目していきたい。
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