スシロー「デジローで好調」に見る回転ずしの変容 回らないように変化してもワクワク感は増している
事実、ファミリー層や若年層でデジローの効果が上がっているのは、こうした「ワクワク感」に親和性が高い客層だからということもあるだろう。
2つ目は、キッチンの作業効率の高まりだ。実際にすしを流す人的コストを減らすことができ、店舗運営の効率が上がる。
実はスシローでは、デジローに加えて「オートウェイター」というシステムも導入しているが、これはタッチパネルで頼んだ商品を、自動でテーブルまで運ぶ仕組みだ。デジローとの合わせ技で、店舗運営の効率アップに大きな貢献を果たしている。

さらに3つ目として、衛生面での心配が無いことも重要だ。
スシローは「醤油ペロペロ事件」で安全性への不安が生まれたことも記憶に新しい。これはすしがレーンに流れていたからこそ起こる問題だったが、デジローではその心配をする必要はまったくない。「スシローは不衛生じゃないの?」というイメージを覆す点で非常に優れている。
こうして考えると、デジローは客側にとっても店側にとっても良いことずくめで、非常に優れたシステムだといえるのだ。
回転ずし業界をめぐる現状
デジローが導入された背景には、回転ずし業界をめぐる現状がある。
1つ目に運営コストの圧迫、2つ目に回転ずし業界の飽和だ。
1つ目について。魚の値段が上昇している。円安や、地球温暖化による漁獲量の減少、輸送燃料費の高騰などの影響だ。「安さ」が価値の一つとなっている回転ずし業界にとって、死活問題である。事実、スシローでは2022年10月に大規模な価格改定が行われ、1984年から続いていた「1皿100円」が終了。同じ時期にくら寿司も値上げに踏み切り、同じく100円皿が終了している。
これまで以上に運営コストを工夫しなければ厳しい局面にあるわけだ。
これに加え、回転ずしチェーンの国内店舗が飽和している。日本ソフト販売が発表する、すしチェーンの店舗数ランキングによれば、業界全体の店舗数は4164店舗(2024年7月)。その1年前は4201店舗だったので、わずかに減少している。
実は、2年連続でその数は減少していて、国内店舗数の天井が見えてきた形だ。
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