アマプラ「広告非表示に390円」導入で起きる変化 むしろ広告主からの収益が拡大する可能性がある

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スーパーマーケットでレジを待っているあいだ、目についた商品に手を伸ばしたことがある人もいるだろう。アマゾンプライムビデオも、映画やドラマを見始める前の冒頭に広告が流れれば、少なくとも印象には残る。

アマゾンはプライムセールも実施しており、自社の売上にも寄与するだろう。アマゾンは映画やドラマを見る前に広告も出せるし自社サイトで商品も売れるのだ。まさに映画から買い物までのワンカットというわけか。

もっともここまでは述べた通り楽観論。「見てもいいかなと思える広告」ならば利用者も許せるだろう。でも、自分にはマッチしない、あるいは違和感のある広告が続ければ、「プライム会員なのにこんなのを見せるの?」と批判が出てくるかもしれない。顧客第一を掲げるアマゾンは、動画と広告をいかに融合させるだろうか。

そして未来へ

多くの人が知る通り、アマゾンは決済サービスを外部に提供している。たとえば映画館でのチケット決済にアマゾンのシステムを利用しているケースが少なくない。アマゾンはECサイトを超えて、リアルな買い物についても多くの情報を有している。アメリカではホールフーズ・マーケットもアマゾングループだ。

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『買い負ける日本』(幻冬舎新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

オムニチャネルという言葉は、ネットやリアルの垣根を超えて消費者と接点をもつ施策を指す。さらにアマゾンはジャンルも超えてビッグデータを有する。そしてそれを広告に活用する。

プラットフォーム企業の収益源として、現在では広告主からの広告費が最大の成功例といっていい。そのためにプラットフォーム企業は“人間ウォッチ”データ収集ツールを駆使して、利用者の嗜好や行動を分析しようとする。

さらにプラットフォーム企業がコンテンツを作り始めると、そのコンテンツのなかに自然な形で広告主の商品を入れることができる。いわゆる劇中コラボだ。そしてコンテンツの、前・中・後に広告を入れれば効果的だ。サイトへの動線も作ることができるだろう。

プラットフォーム企業にしても、広告主の側にしても、問われるのはクリエイティビティだろう。利用者はプラットフォーム乱立、デバイスの乱立、コンテンツの乱立のなかで、なにを選んでいいかわからずに漂っている。

各動画プラットフォームで、それぞれ広告なしオプションに加入したとする。「おっ! やっと快適に観られるな」と思っていたら、そのコンテンツ本編そのものが広告だった……という笑い話が、笑い話にならなさそうだから、現代はおそろしい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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