プライム会員の声としては、「プライム会員の特典が非常に充実しているから支払ってもいい」という積極的な人から、「広告は嫌だから払っちゃうかなあ」という消極的な支払いを表明する人もいる。
また、「広告はストレスだから見なくなるかも」という人も、「映像作品のどのタイミングで広告が挿入されるのか」と疑問を呈する人もいてさまざまだ。
そもそも論としての広告、広告非表示ビジネス
しかし、あらためて考えると、である。この「広告で収入を得て、さらに消すことでも収入を得るビジネス」はきわめて奇妙なものだ。
広告主はプラットフォーム企業に「商品を売りたいから、プラットフォームに宣伝を載せるためにお金を払う」立場だ。そして利用者は「宣伝というノイズなんて見たくないからお金を払う」立場にいる。この矛盾が、矛盾と思われないまま両立している。プラットフォーム企業はその両方から収益を得る。
ここで、非表示ビジネスについて計算してみよう。
広告なしオプションは月額390円=年間4680円だ。仮に1万人が加入しても4680万円にしかならない。もし10万人でも4.68億円だ。もちろん100万人の可能性もあるだろうから、スケーラビリティを無視しろとはいっていない。実際、競合サービスの話ではあるが、例えばNetflixは日本の会員数が2024年6月時点で1000万を超えている。とんでもない規模感だ。
それでも、どうだろう。もし数十万人程度が月額390円のサービスに加入したとして、巨額の制作費がかかる映像作品をどれくらい撮れるだろうか。
ただ、こう考えると、広告主(スポンサー費用)と利用者(非表示費用)をわけると、アマゾンは広告主からの収益を期待していると私は予想する。
しかも、その根拠がある。というのも、アマゾンはECサイトであらゆるものを販売し、さらに動画や音楽などさまざまなサービスも供給している。
アマゾンの段ボールが毎日届く家庭も珍しくなく、まさにロゴマークの矢印がAからZまでを示すように、なにからなにまで生活の全般をカバーする。つまりアマゾンがもつ、膨大な購買データや視聴履歴データを活用した広告を流せる可能性は高い。いわゆる、究極的なほどに個別最適化された広告といえるものだ。
そうすれば広告主もかなりの動機をもってアマゾンプライムビデオに広告を出稿したくなるだろう。そして、実際に他のプラットフォームとくらべて購買率が高く、費用対効果が上回れば広告主が出稿しない理由がない。
そして、かなり楽観的にいえば、利用者にとっても、自らに最適な商品の広告が流れたり、好みの商品の割引広告が流れたりするのであれば、むしろノイズではなくメリットと言えるかもしれない。
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