「独裁的なリーダー」の横暴を止める策はあるのか? 巨額の報酬がトップの傲慢さを招く

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

事実を確認しなければ、「言った者勝ち」になってしまいます。言論を増幅させやすいシステムのもとでは、声の大きい者が勝ってしまう。それは社会全体にとって好ましいことではありません。

本書に、見た目の業績だけに騙されないこと、結果だけではなく、プロセスを見るということが書かれていました。これも重要な指摘です。

私たちは、目立つもの、すぐ近くにあるものを因果関係として結び付けやすいところがあります。

例えば、新しいリーダーに交代した直後に、成果が上がると、それは新しいリーダーのおかげだと思いやすいものです。しかし、大抵の場合は、前任者の功績がなにかしら残っているものです。

また、独裁者が良いことをする場合もあります。独裁者だからこそ素早く決定ができて、それが功を奏することも当然あるでしょう。ただ、独裁体制の欠点は、誤りがあったときにそれを正すことはほぼ困難ということです。憲法やルールを変更して任期を延長したり、反対者を罰したりすることも行われやすくなります。

人気取りの政策に惑わされないためにも、業績評価のやり方については、もう少し考慮していく必要があるのではないかと思います。短期的な視点だけで判断せずに、長期的な視点をもっと大切にすることが重要でしょう。短期的には黒字化しても、長期的には資産を失っていたということは、ままあることですから。

「人格」よりも「悪事」を正す

リーダーの問題が露見した時、私たちはその個人に原因を帰属してしまいがちです。状況ではなく行為者個人に原因を帰属しやすいというのも私たちが持つ判断のバイアスの1つです。

しかし、人間は、誰もが間違えるもので、完全に正しい人はいません。善意も、いつも正しいとは限らないのです。人間は誤りを犯すものだという前提で、組織は意思決定していかなければなりません。

そして、悪事については、失敗を認めて十分に反省しているならば、もう1度受け入れる社会であってほしいと思います。

議論は是々非々で、人に帰属しすぎず、事実に基づいて判断していく。「人格」よりも「悪事」を正すという考え方になれば、組織の改革もしやすくなるのではないでしょうか。

(構成:泉美木蘭)

安野 智子 中央大学教授、社会心理学者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やすの さとこ / Satoko Yasuno

東京大学社会学研究科社会心理学専攻博士前期修了、東京大学人文社会科学研究科社会文化研究専攻博士後期満期退学。2011年より現職。近年の研究テーマは、世論形成過程の社会心理学的分析、政治意識、信頼感と社会関係資本、ITリスク認知とリスクマネジメント。著書に『重層的な世論形成過程:メディア・ネットワーク・公共性』(東京大学出版会)、編著に『民意と社会』(中央大学出版部)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事