中国で「廃墟ビルばかり」新興企業はなぜ消えた? 中国のスタートアップ投資は「もう終わった」のか

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スタートアップ企業は一か八かの奇想天外なビジネスが多いが、政府系ファンドは公金を浪費したとの批判を恐れ、こうしたビジネスには出資しない傾向が強い。シェアサイクルなどはその典型だろう。

シェアサイクルとはつまるところ、街中に大量の放置自転車を置いて回るようなビジネスだ。通行の邪魔になるとの社会的な面から見ても、大量の自転車という資産を用意しなければならないとの財務的な面から見ても、きわめてリスクの高いビジネスであった。

実際、中国でも先行した大手企業が潰れるなどの混乱が生じたが、今やそのビジネスモデルは世界に広がり、定着している。日本でもシェアサイクルや電動スクーターのシェアリングサービスはすでに定着した感がある。奇想天外なビジネスへの出資を控えると、こうした大きなチャンスを逃しかねない。

七浦路服飾商業街
ビル棟が完全に無人になっていた市場。ホールには売れ残りの商品がまだ残されていた(筆者撮影)
七浦路服飾商業街
ネット販売業務が主になった七浦路服飾商業街の店々。ネットショップ用に撮影するスタッフの姿が散見される(筆者撮影)

悲観論の蔓延は経済低迷の要因

以前は、中国からは面白いビジネスアイデアが生まれると評価し、実際に現地を視察し、そのアイデアを模倣しようという起業家も少なくなかった。

ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 (文春新書 1481)
『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

孫正義は米国のインターネットビジネスを真っ先に日本に持ち込んだ経験から、海外で成功したビジネスモデルを日本でいち早く展開せよという「タイムマシン経営」を唱えた。一時期は中国から日本への「タイムマシン経営」が試みられていたが、そうしたダイナミズムは今や見る影もない。

「不動産危機を境に中国社会はまるで別の姿へ」と変わってしまったかのようだ。悲観論は人間の心理や社会のムードに属するが、その蔓延は経済低迷の要因となる。今後も景気はよくならないとの予想のもとに人々が行動し、投資や消費を抑制することで、本当に景気が悪化してしまう。

中国経済の先行きは暗い、その悲観的な予測が実際の未来となる予言の自己成就を招きかねないわけだ。

梶谷 懐 神戸大学大学院教授

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かじたに かい / Kai Kajitani

1970年生まれ。現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は現代中国の財政・金融。著書に『現代中国の財政金融システム』(名古屋大学出版会、2011年、大平正芳記念賞受賞)、『中国経済講義』(中公新書、2018年)などがある。『週刊東洋経済』にて「中国動態」を連載中。

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高口 康太 ジャーナリスト

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たかぐち・こうた / Kota Takaguchi

ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を続けている。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)。

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