中国で「廃墟ビルばかり」新興企業はなぜ消えた? 中国のスタートアップ投資は「もう終わった」のか
2010年代の中国経済が輝いて見えたのは、GDPや所得の成長もさることながら、飛躍的な成長を遂げるスタートアップ企業が数多く誕生したからだ。動画サービスのティックトック、ドローンのDJIなど世界的に有名なブランドも誕生し、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)の数は米国に次ぐ世界2位となった。ただ、それは過去の話だ。
大川龍郎「中国ユニコーン企業の伸び悩み」(独立行政法人経済産業研究所公式サイト、2024年)によると、中国のユニコーン企業数は2021年は169社、2022年と2023年は172社とほとんど増えていない。
「中国のスタートアップ投資はもう終わった」と、筆者の友人である中国ベンチャー企業創業者は嘆く。
彼は、誰でも簡単にギターやピアノを習得できる、IoT(モノのインターネット)楽器で起業した。大手IT企業の投資も獲得し、中国のみならず米国や日本にも事業を拡大。以前は世界的な楽器メーカーを目指すと鼻息も荒かったが、再会すると、「中国経済ヤバい、うちの会社の経営もしんどい、どっか買収してくれないかな」と愚痴ばかりこぼしている。
実際、統計を見てもスタートアップ投資は激減している(図5─3)。2021年はコロナを受けてのバイオ医薬品投資ブーム、米国の規制を受けての半導体投資ブームがあったので突出しているが、それを例外とすれば、2017年をピークに減少したことがわかる。
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奇想天外なビジネスが生まれにくくなった
しかし、投資金額の減少以上に危機的なのは、投資先となるビジネスが限定されはじめていることだ。どういうことか。
民間ファンドが縮小する一方で、政府引導基金と呼ばれる地方政府が中心となり設立したベンチャーファンドは肥大化した。2023年に新設されたベンチャーファンドでは、出資額ベースで40.6%が政府系ファンドによって占められているほどだ。
企業からすると、資金調達のためには国が定めた重要産業分野にあわせなければならず、事業の自由度が失われる傾向にある。