希少・難治性疾患克服を目指す国際会議、ありふれた病気の治療にも希少疾患研究が役立つことを報告
希少・難治性疾患の克服を目的に、医師や患者、製薬企業、規制当局などの関係者が一同に集まった会議が2月4日から6日にかけて東京大学駒場リサーチキャンパス(東京・目黒区)で開催された。
「ICORD2012」(第7回 国際希少・難治性疾患創薬会議)と題された同会議には、日本のほか、欧米や中南米、アジア各国などから250人以上が参加。希少・難治性疾患の研究から創薬、各国の医療制度上での支援策や患者負担軽減策など、さまざまなテーマで意見交換が行われた(写真)。
同会議で関心を集めたのが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)のヤン・インゲ・ヘンター教授(婦人・小児科領域)による講演だった。ヘンター氏は「希少疾患の臨床研究における成功は、コモン・ディジーズ(一般的な疾患)の治療研究にとっても有効である」というタイトルで講演。「希少疾患研究の知見を生かすことで重篤な感染症を克服できた例」として、中国における新型インフルエンザ治療での抗がん剤使用の実例を紹介。
「希少疾患の治療研究を続けることは、関連する疾患やそれ以外の疾患の治療にも多大な利益をもたらす可能性がある。コストも決して高くない」とヘンター氏は結論づけた。
ヘンター氏に続いて講演した愛媛大学の石井榮一教授(小児科)は、日本で50万~80万人に1人といわれるHLH(血球貪食性リンパ組織球症)の無イベント生存率(再発、増悪、合併症などがなく生存する率)が10年前の6割から最近では8割に向上していると指摘。「希少疾患での国際的な治療研究が有益であることを示している」と強調した。
会議では中国や韓国、台湾の専門家も出席。精華大学(中国)のワン・チェン・ガン教授は、全国に先駆けて上海市で希少疾患患者を対象とした治療研究・患者支援のための制度創設作業がスタートしていることを報告。日本からは厚生労働省の山本尚子・健康局疾病対策課長が、難病対策に関する立法化や制度改革の必要性について説明した。
(岡田広行 =東洋経済オンライン)
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