定年退職後の「資産運用」注意すべきポイントとは ポートフォリオは?積立投資は継続?疑問に回答

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多くの投資信託を持っていると、「使いながら運用する」際に、「どの投資信託から売却すればいいのか」という新たな迷いを生むことになりかねないのです。

バランス型投資信託への乗り換えの落とし穴

リスク軽減策には、他の方法もあります。株式や債券など多様な資産クラスに投資する「バランス型投資信託」を活用することです。

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多くの投資信託を使って分散投資を行う代わりに、バランス型投資信託1本に集約できれば、先ほど懸念した「どの投資信託から売却すればいいのか迷う」といったことは起きません。

さらに、バランス型投資信託の場合、ポートフォリオのバランスが崩れても、自動でリバランスしてくれるというメリットもあります。

バランス型投資信託の中には、決められた年に向けてポートフォリオのリスク性資産比率を自動的に引き下げる「ターゲット・デート・ファンド」もあり、このようなタイプの投資信託であれば、退職後のリスクコントロールも簡単です。

ただし、退職時点でバランス型投資信託やターゲット・デート・ファンドに乗り換える場合、その時点で出ている運用益に対して税金がかかることには注意が必要です。

たとえば、700万円の投資信託の投資元本が280万円、運用益が420万円だったとします。他の投資信託に乗り換える場合は一括売却することになりますが、その際には運用益420万円に税金が20.315%かかり、85万3230円の税金を支払うことになります。

すると、バランス型投資信託やターゲット・デート・ファンドに再投資できる金額は614万6770円となってしまいます。投資元本が小さくなれば、その後の投資効率が下がってしまいますから、このような一括売却にはデメリットも大きいのです。

このように具体的に考えてみると、運用益が非課税となる確定拠出年金やNISAを現役時代から有効活用しておくことの重要性が、より強く感じられることでしょう。

野尻 哲史 フィンウェル研究所代表

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のじり・さとし / Satoshi Nojiri

合同会社フィンウェル研究所代表。1959年生まれ。一橋大学商学部卒。山一証券経済研究所(のちに同ニューヨーク事務所駐在)、メリルリンチ証券東京支店調査部(のちにメリルリンチ日本証券調査部副部長)、フィデリティ投信(のちにフィデリティ退職・投資教育研究所所長)を経て、2019年5月、定年を機に合同会社フィンウェル研究所を設立。資産形成を終えた世代向けに資産の取り崩し、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。18年9月より金融審議会の各種ワーキング・グループ、タスクフォース委員に就任。行動経済学会、ウェルビーイング学会会員。

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