定年退職後の「資産運用」注意すべきポイントとは ポートフォリオは?積立投資は継続?疑問に回答
「退職のときに」と心配になるのは、「退職時点で株式・投資信託をすべて売却する」という考えが背景にあるからでしょう。
金融市場の波乱で保有資産価値が大幅に下落しているときに、すべてを売却するとなると、退職後の生活に大きな支障をきたします。そのような事態を避けるために、価格変動リスクの高い株式・投資信託の比率を徐々に減らしていけばいいというわけです。
しかし、この考え方には落とし穴があります。株式や投資信託の比率を下げてしまうと、本来なら退職まで運用を続けたことで得られる利益を失うことにもなりかねません。
80歳からは「使うだけの時代」
前回までに見てきたように、私がおすすめするのは「80歳を目安に運用している資産をすべて売却し、『使いながら運用する時代』を終えて『使うだけの時代』に入る」ことです。退職時点で運用資産をすべて売却する必要はありません。
「80歳で運用資産をすべて売却するなら、その時点に向けてリスク性資産の比率を下げておくべきではないか」といわれることがありますが、「使いながら運用する時代」の間に、株式や投資信託を少しずつ売却して使っていくわけですから、この方法なら「預貯金を含めた資産全体に占める株式・投資信託の比率」は自然に低下していくことになります。
なお、制度上、運用をやめて売却せざるを得ない口座もあります。たとえば「確定拠出年金(DC)」です。その受け取り方は「一時金(一括)」と「年金」の2つがあります。
60歳や65歳といった時点で一時金として「一括」で受け取る計画であれば、その時点で確定拠出年金を一気に現金化することになります。この場合、その時点に向けて、確定拠出年金における投資信託の比率を徐々に下げておく必要はあるでしょう。なぜなら、そのときに全額売却をすることになりますから、その時点での金融市場の波乱を避けるようにしたほうがいいからです。
あるいは、一時金で受け取るときまでリスク性資産比率を維持しておき、万が一その時点で金融市場の波乱があれば、年金受け取りに切り替えるという方法もあります。年金受け取りにするということは、まさに「使いながら運用する」ことですから、市場が回復するのを待ちながら少しずつ売却していくことになります。
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