エロ詩吟から岩手の人気者に「天津木村」の現在地 「中年の危機」で不安になるも決めた移住の覚悟

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

売れっ子の芸人が1億円で自宅を新築したという話が耳に入り、不安になったこともある。「娘たちを成人させるまで、どれだけ働けばいいのか……」。安定した生活に強く憧れた。

40代は価値観や人生観が揺らぎやすい時期で、多くの人にとって人生の折り返し地点であることから「人生の正午」とも呼ばれる。

自身の成長実感が得られないことへのいら立ちや自分より若い世代が活躍していることへの焦り、体力的な衰え……。自身の老いを実感するにつけ、人生の残り時間を考えて「自分の人生はこれでよかったのか……」と自問自答し、深刻なケースではうつ状態や依存症に至る人もいるだろう。

このような中年の危機は「ミッドライフクライシス」「ミドルエイジクライシス」などとも呼ばれ、中田敦彦さんがYouTubeで実体験を発信するなど関心が高まっている。

まさに木村さんも、次々と若手がブレイクしていく芸能界に身を置きながら、「俺はホンマに一生ここでやっていけるのか……」と自問自答する日々を過ごしていたという。

覚悟を問うヒロミの言葉に救われた

そんな木村さんに転機が訪れたのは、コロナ禍の2020年。元テレビ朝日の編成局長で岩手朝日テレビの役員になっていた畠山大さんから、毎週土曜朝に放送している情報番組のMCとしてオファーが舞い込んできたのだ。

番組放送中の様子
一緒に番組を進める局のアナウンサーやスタッフからの信頼も厚い(写真:筆者撮影)

東京から盛岡は新幹線で約2時間。新幹線で通おうと考え、そのことをヒロミさんに告げると思いがけない反応があった。

「ヒロミさんは『放送のためだけにパッと来てパッと帰るやつが、岩手の視聴者に愛してもらえると思うのか? 同じ空気を吸って同じ景色を見て暮らすからこそ、愛してもらえるんじゃないのか? お前にそれだけの覚悟があるのか』と言ったんです。

それを聞いて、ずっと自分の前にかかっていたモヤモヤが晴れたというか、自分のやることが見えて、目標が定まった気がしました」

その場でヒロミさんに「僕、移住します」と伝え、吉本興業や関係者にも連絡を入れた。

→→続き【後編】「芸人・天津木村が岩手で広げた"新境地"の充実感

手塚 さや香 岩手在住ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

てづか さやか / Sayaka Tezuka

さいたま市出身。毎日新聞の記者として盛岡支局や学芸部で取材経験を積んだ後、東日本大震災からの復興の現場で働くため、岩手県釜石市に移住。復興支援員として活動し、2021年にフリーランスとして独立。一次産業や地方移住の分野を中心に取材・執筆しているほか、キャリアコンサルティングや地域おこし協力隊の支援活動も行っている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事