安保法成立で大転換、「危険度」増す自衛隊員 法律にも実際の運用にも問題点は多い

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以上二つの事態とも、北朝鮮が米艦船に攻撃を行った際は、海自の艦船も対応し、必要最小限度の攻撃ができる。北朝鮮のミサイル迎撃も時によって可能だ。米艦船の展開地域に機雷が敷設されれば、海自の掃海艇が出動、掃海活動が行われることになる。

対北朝鮮以外で現実的にありうるのは、新設の国際平和支援法と、改正PKO(平和維持活動)協力法が、絡むようなケースだ。

前者は、他国軍の後方支援のため、自衛隊を常時派遣できるようになった。現状では、IS(「イスラム国」)と戦う国の後方支援が考えられる。これについて、中谷元防衛相が国会で政策判断としてないと否定しつつ、「法律的にありうる」と述べた。派遣先も「非戦闘地域」のみから、「現に戦闘行為が行われている場所」以外なら可となった(事態3)。

後者については、国際連合が直接関与しない平和維持活動にも自衛隊が派遣され、展開先から離れた場所に駆け付け他国軍や民間人を警護できる、いわゆる「駆け付け警護」が可能になった。旧PKO協力法が「国連が統括する平和維持活動」に限定していたのが、国連の関連機関やEU(欧州連合)などの国際組織による要請でも、派遣できるようになる。駆け付け警護を遂行するためには武器使用も可能なのだ(事態4)。

緊急なら政権の恣意的な判断も可

ただし、仮にこれら四つの事態が起きても、実際に自衛隊の派遣・出動が可能かどうかには、ハードルがある。

たとえば事態1では、集団的自衛権を容認する武力攻撃事態法そのものに、憲法違反という指摘が多数なされた。また事態2や3については、実際の戦闘では局面が流動的になりやすく、他国への武力行使との一体化が強く懸念されている。非戦闘や非戦闘地域も、状況によっては、戦闘・戦闘地域へ転じやすい。

さらに事態1や2では、国会の事前承認が必要だが、緊急の場合と判断されれば、事後承認も可能だ。政権の恣意的な判断もできる。結果的に自衛隊一人ひとりにとって、自らを取り巻く危険は、従来よりはるかに高まった。

「週刊東洋経済」2015年10月3日号<9月28日発売>「核心リポート06」を転載)

 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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