「いきなり!ステーキ」に死角はないのか 「俺の」が着席に転向した意味を考える

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「いきなり!ステーキ」は、今後も国内出店を加速し、今後はニューヨークへの進出も名言している。今後も立食形式のスタイルを変えないのかを、ペッパーフードサービスの川野秀樹営業企画本部長に聞いてみたところ「これまで通りのスタイルでやっていく」と断言した。「着席にすると、お客さんはフォークとナイフを一旦置く。そうなると滞在時間が長くなる。これだけ高い原価でやっているので、滞在時間が長くなるとこのビジネスモデルは成り立たない」というのだ。

今後の課題は?

いっときのブームで終わらないような努力が必要

「俺の」シリーズのように、ディナータイムをメインとする業態では、アルコールを取りながら、時間を楽しむという目的が多いことに対し、「いきなり!ステーキ」は「肉が食べたい!」という来店動機があり、お店の使い方が異なる。

ただ、今の消費者は目新しいものに飛びついても一定期間が過ぎると飽きてしまう。業態は違うが「焼き牛丼」という新しいスタイルで「吉野家」や「すき家」などの既存牛丼店に挑み、一斉を風靡した「東京チカラめし」があっという間に廃れてしまったのは、消費者の移ろいやすさを象徴している。

高い評価を受けて行列をつくる「俺の」ですら、当初のスタイルを修正せざるをえなくなった。「いきなり!ステーキ」にも同じ課題がのしかかる可能性がある。実はすでに一部店舗では着席スタイルを試験的に導入しており、その危機感はあるのかもしれない。

ほかにも気になるのは、ファストフードとして考えるとやや高めの価格設定となっている点だ。飽きられてしまったら一気に客離れが進む恐れはある。今の強みを生かしつつも、移ろいやすい消費者の気持ちを推し量りながら、柔軟に変身していかざるをえない場面を想定しておく必要はあるだろう。どんな商売でもそうだが「成功体験」にこだわりすぎて足元をすくわれることはつねにある。

三上 成文 フードアナリスト・ブランディングプランナー

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みかみ しげふみ / Mikami Shigefumi
外食大手企業での現場経験を経て、広告代理店にて広告営業を経験。2009年、当時のクライアントであった外食ベンチャーにて、ブランディング/PRに携わり、自社PRだけでなく、地方自治体や他社との業務提携PRを担当。2014年12月より、海外人気店の日本展開PRに携わる。

 

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