「いきなり!ステーキ」に死角はないのか 「俺の」が着席に転向した意味を考える

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糖質制限ダイエットの志向など赤身肉への注目度が高まったという背景もあるだろうが、それだけではない。ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長は、「『分厚いステーキをお腹いっぱい食べたい』という、老若男女誰しもが持っているこの欲求を満たすという、時代ニーズを先取りしたことが繁盛している理由だ」と話す。シェフが目の前で肉をカットして焼いてくれるのに見入る、という楽しみもある。そんな新業態の「いきなり!ステーキ」が人気を博しているのも納得だ。

ただ、「いきなり!ステーキ」にまったく死角がないかというとそんなこともなさそうだ。折しもコンセプトの近い飲食チェーンが興味深い動きをしている。

「俺の」シリーズで初の試み

東京・銀座。おしゃれな飲食店やブランドショップなどが目立つ並木通りの一角に「俺のフレンチ 銀座並木通」が、9月15日にオープンした。「俺のフレンチ」といえば「俺のイタリアン」などと並び、国内外の一流シェフをスカウトし、高級食材を使った一流の料理を他者がまねできないようなお手頃な価格で提供することで、連日行列をつくっている「俺の」ブランドの外食チェーンだ。ブックオフコーポレーション創業者として知られる坂本孝氏が立ち上げた「俺の株式会社」が運営している。

9月15日にオープンした「俺のフレンチ 銀座並木通」、シリーズとして新たな取り組みのお店だ

「俺のフレンチ 銀座並木通」は、「俺の」シリーズで初めてコース料理だけを提供するという新たな取り組みのお店だ。たとえば6品フルコースで3999円(税別)。フランス料理のフルコースとしては破格といえるだろう。ただ、「俺の」シリーズのお店をよく知っている人からすると、意外な事実がもう一つある。それは店内の34席が全て着席制だということだ。

「俺の」シリーズの原価率は平均で55%。中には100%を超える料理も提供している。2011年9月、東京・新橋に1号店の「俺のイタリアン新橋本店」が登場したとき、料理の内容とつり合わないお得な価格を実現したメニューの数々に外食業界関係者は驚愕したものだ。カラクリは店の規模を小さく、さらには立食形式とすることだった。限られたスペースにより多くのお客を入れ、回転率を高めて収益を確保してきた。当事者は否定するかもしれないが、「いきなり!ステーキ」はこのコンセプトとかなり近い。

ところが、「俺のフレンチ 銀座並木通」のように今後、「俺の」は新店を原則として全席着席スタイルとしていく方針のようだ。坂本社長が一部メディアの取材に応じ、その方針を認めている。既存店の改装で立食から着席に切り替えていっている例もある。当初、30〜50席という小規模のお店を志向してきた「俺の」だが、最近は100席を超える大型店の積極的な展開にも乗り出している。

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