造船業界に14年危機、存続を懸け大手2社が合併

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JFEホールディングスとIHIが、10月に双方の造船子会社を合併することで合意した。合併するのはJFE傘下で国内2位のユニバーサル造船と3位のアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド。合計建造量は2010年実績で約370万総トン。国内首位の今治造船に迫り、世界で7位に浮上する。

「ある程度の規模なしには韓国、中国勢と戦えない」。新会社の社長に就任する三島愼次郎・ユニバーサル造船社長は、1月末の会見で危機感をあらわにした。両社は08年春に統合の検討開始を表明したが、その後の協議は暗礁に。ここへ来て基本合意へと進展したのは、事業環境が急激に厳しさを増したからだ。

日本の造船業は、00年に建造量で韓国に抜かれ2位へ転落。近年は人件費の安い中国勢の台頭もすさまじく、10年に世界最大の建造国へ躍り出た。巨大な造船所を次々に立ち上げた韓国、中国勢の攻勢を受け、国内造船会社は厳しい状況に追い込まれている。

今後待ち受けるのが「14年危機」だ。国内造船各社はリーマンショック前の世界好景気時に受注した採算のよい建造案件がまだ残っており、そうした受注残の消化で来年までは何とかしのげる。問題は足元の新規受注だ。

近年の建造ラッシュによる船数増加や景気悪化などの影響で、足元の世界の新規造船需要は低迷。その限られた需要を取ろうと韓国、中国企業が安値受注に走り、国内勢の新規受注は大幅に落ち込んでいる。何しろ、「船価暴落とこの超円高で、受注すれば即赤字」(国内造船大手)。とはいえ、このまま新規受注が乏しいと受注残が底を尽き、14年から造る船がなくなってしまう。

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