「東京サラダボウル」が描く日本の外国人犯罪の闇 弱者が搾取されて利用されるリアルに切り込む

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一方で、そんな人間性から、歌舞伎町の外国人社会から厚い信頼を得ている。緑色の髪も、雑多な街で埋没しないためにあえて目立たせる自己プロデュース。世界各国の料理を食べながら、国も人種も関係なく、さまざまな人と明るくコミュニケーションを図り、ポジティブなエネルギー全開で周囲を動かしていく。

鴻田のバディとなる有木野は、真面目で何事にも温度感の低いキャラクター。仕事に自身の感情を一切入れず、参考人や被疑者と警察官を正確な逐語訳でつなぐことに徹する。

そんな有木野は元刑事。過去のある出来事によって警察官を辞め、他人と距離を置いて生きてきたという暗く重い過去を背負う彼は、鴻田との出会いを機に過去に向き合うようになっていく。

東京サラダボウル 奈緒 NHK
『東京サラダボウル』公式サイトより引用

2人は、一般的な刑事ドラマで一緒に事件捜査に取り掛かるバディとは違う。鴻田は、手柄を立てることに必死になる同僚刑事たちが見向きもしない小さな事件や、生活者の困りごとに真摯に向き合う。鴻田の姿勢や思いに次第に共感するようになる有木野は、彼女を気にかけ、職務を超えてサポートするようになる。

マイノリティとして生きる外国人の葛藤

異端の存在である鴻田は、困っている人のために、いつも些末な事件にひとり取り組むが、それが外国人の犯罪集団と不法滞在者などの弱者が複雑に絡み合う大掛かりな組織犯罪の一部につながる。

そこに映るのは、日本社会でマイノリティとして暮らす外国人居住者たちの生活には、大なり小なりさまざまな困難や葛藤があり、誰もが社会的弱者であること。

そして、多くの善良な外国人居住者たちのすぐ近くで同じ外国人による犯罪が起こっており、知らず知らずのうちに関与していたり、意図せず巻き込まれたりする現実がある。

訪日外国人旅行者でにぎわう街が背中合わせにするリアルであり、多くの日本人にとっては、警察に取り締まってほしいものの、どこかで無関係であるとも考えてしまう現実だろう。

それを明るくポップなキャラクターを主人公にしてオブラートに包みつつも、他人事ではすまない日本社会の一面をシリアスに目の前に突きつけてくる社会的意義のあるドラマになっている。

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