砂漠や岩山地帯を抜ける都市間の道路は、景色もあまり変わらず退屈だが、車窓の両側には時折、ラクダやヤギの群れが見える。「ラクダの横断注意」とか、「Sandstorm(砂嵐)に注意」という標識が頻繁に現れるのは、サウジアラビアならではだ。
ラクダはかなり大きいので、接触すればクルマにもかなりのダメージがありそうだし、砂嵐は絶対に遭遇したくない。
異教徒が入れない「聖地巡礼」の原点
アラビア半島をほぼ横断し、後半は預言者ムハンマドの霊廟がある聖地メディナ(現地語でマディーナ)と、聖地メッカへの玄関としての機能を持つ港町で、サウジアラビア第二の都市であるジェッダを訪れた。
メディナでは、ムハンマドの没した地に立ち、彼の墓の所在地でもある「預言者のモスク」と世界最古、つまり世界初のモスクであるクバー・モスクに足を運んだ。
クバー・モスクは、2023年から異教徒も建物の中に入れるようになったが、預言者のモスクのほうは、今も中に入れない。異教徒が行けるのは、敷地の入り口までだ。
このモスクの収容人員は100万人ともいわれ、祈りの時を告げるアザーンの音とともに、何千人というムスリムが吸い込まれていく。
旅の最後に、世界遺産となっているジェッダの旧市街を散策したり、世界でも指折りの透明度を誇る紅海の夕景を見るなどして、1週間の旅を終えた。
どこを訪れても人懐っこい笑顔に迎えられ、店に入れば、それが飲食店でなくてもスパイシーなサウジコーヒーと、名産のデイツ(ナツメヤシの実)の歓待を受ける。「おもてなしの国」という評判に偽りはなかったといえる。
なお、もうひとつの、そして最大の聖地メッカは、今も非イスラム教徒は、中心に建つカーバ神殿はおろか、街への入り口に検問があり、市内そのものにも入れない。その意味では、観光立国へと舵を切った一方で、厳格なイスラム国家の姿も強く残っているといえる。
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