例えば、かつてのプロ棋士編入試験の試験官を行った高野秀行七段が、今回の件の背景としての、朝日新聞からのインタビューでこのように述べている。
「(対局に負けて)がっくりきました。このとき思ったのは、三段リーグを戦っている人たちがどう思うかなということでした。大変な思いで棋士を目指す若者たちが、これから瀬川さん(編入試験に合格した)の対局の記録を取って『瀬川先生』と呼ばなきゃいけない。申し訳ない思いでした」
「自分がプロを1人増やしてしまった。いざというときに責任を取れる態勢をつくらなければいけないと思いました。将棋連盟は決して大きな団体ではない。連盟からは棋士に対局料などが支払われますが、棋士が1人増えるということは、人件費が増すことでもある。そのことで何か言われることがあれば、引退しないといけないな、と思いもしました」
高野七段のまじめさ、誠実さ、責任感は素晴らしい。しかし、そんな必要はない。
将棋もJRAも「新しいオープンな考え」に転換すべき
私は、将棋界のさらなる発展のために新しい時代に入っているのだから、新しいオープンな考え方に転換すべきだと思う。一定の力があれば、プロと認める。プロの棋戦にはプロは参加できる。しかし、テニスのランキングなどと同じように、ランキングを持っていても食えるかどうかは別問題であり、それは本人次第である。
女流も男性競合アマもともかく、裾野を広げてプロの土俵で戦い、そこでどう戦うかは、棋士たち自身の多様性次第とする。そのほうがダイナミズムも生まれ、将棋そのものも良くなっていくのではないだろうか。
JRA(日本中央競馬会)も同じである。入り口を厳しくして、徹底管理して、しかし、面倒は徹底的に見る。騎手も調教師も厩務員も。しかし、そうではなく、一定の基準を儲け、免許を与え、後は切磋琢磨の競走ではないか。
騎手は実質そうなっているはずなのに、中途半端であり、それが「スマホ不適切使用」などの不祥事の多発につながっていると思う。JRA騎手という特権をなくす。調教師も。オープンでダイナミックな世界が、むしろガバナンスの有効性を高めるのではないか。将棋も日本競馬も、世界一の競技である。さらなる発展を期待したい。
※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は2月1日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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