わかりやすい類似の例を挙げると、不動産ファンドがある。アグレッシブな不動産投資運用会社は、まず中核の資産管理会社を作る。
「儲けが大きい上流」から「出口の下流」へ
ここでは、投資家から出資金を集めて運用手数料と成果報酬を得る。かつてのPEの世界は「2&20」が主流だった。つまり、運用資産額の2%の手数料をランニングコスト(維持費用)として徴収し、運用で利益がでたときは、そのうちの20%をPEがいただく、というものだ。
だが、PEに有利すぎるのと、インセンティブのアンバランス(短期的な上昇を追求することにもなりかねない)などから、不動産ファンドだけでなく、PEの世界全体で流儀は変わりつつあるが、本質は同じだ。
これに、経営に責任を持つGP(ゼネラル・パートナー)として、自分たちも一緒に投資する。さらに、預かったお金だけでなく、プリンシパルインベストメント(自己資金を使った投資)も行う。これらは、いちばんリスクの高い投資対象、初期の投資対象がターゲットとなる分、リターンも高い。
その後、これらの資産からキャッシュフローの見通しがある程度落ち着いたところで、私募ファンドにこれらの資産を売却する。移すと言ってもいい。
この私募ファンドには、プロの投資家、あるいは運用者だが、金融商品を受け身に選んで運用する人たちである。この人たちには、上場していなくても、中身を判断させて投資させる。リターンもそれなりにある。
そして、最後が上場REIT(不動産投資信託)である。これは透明性も高く流動性もあり(日本の場合は何とも言えないが)、誰でも投資でき、リスクも低い反面、リターンは安定が見込まれるが、それほど高くない(実際には、日本の個人投資家は、REITでもキャピタルゲインを求め、また売買回転率も高く投資するのであるが)。
このとき、不動産物件は、上流から下流に流れていく。要は、リスクも下がりリターンも安定すると言えば聞こえはいいが、おいしいところをどんどん取られていき、「出がらし」になったものを上場有価証券投資家には与えておけばいい、ということである。不動産投資運用会社にとっては、「出口の確保」であり、悪く言えば、最後にいちばん高く買ってくれる投資家として利用しているわけだ。まあ、上場だから安心ということで投資しているような素人だから、分相応ということだ。
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