日本では、アメリカほどPEファンドのキャパシティ(引き受け能力)はないが、その分、優れた銀行機関がある。政府系金融機関も問題はもちろんあるが、存在意義を賭けて全力で融資してくる。
それに比べ、株式市場では公募で大規模な増資を行おうとする企業はほとんどない。これは日本だけに限ったことではなく世界的な現象であるが、日本はもともと銀行システムが非常に発達していたから、そもそも1949年の東京証券取引所開設以後、本質的にこの直接金融の機能がメインであったことはない。
むしろ、日本で一般的に理解されている東証株式市場の主な機能とは、2つ目の「資源の分配機能」であろう。つまり、将来性のある企業は正しく株式市場で評価され、高い株価がつく。その高い株価を利用して当該上場企業はさらに成長するということだ。
一方、駄目な企業の株価は下がり、上場が難しくなり、非上場化されるか、買収されるか、清算されるかとなる。要は、株式市場の目利き機能である。これが最も重要だという認識はもちろん正しい。いつも何でも反対する私にも、これは反対できないどころが、これ以上重要な機能は株式市場にはないのである。
「資産の運用機能」には本来「相当な警戒」が必要
3番目の「資金の運用機能」とは、例えば、今はやりの(もう流行は終わる頃だろうか)NISA(少額投資非課税制度)である。一般投資家にも、資産運用の機会を与える、ということである。
私は、こちらには猛烈に反対である。正確に言えば、相当警戒しなければいけない罠になる可能性があると思っている。
なぜ、そのような機会を国民に広く与える必要があるのか。「そんなの当然」と思われるだろうが、普段は既得権益を目の敵にする読者のみなさんは、何か気づかないだろうか。普段は、既得権益者はその利権を手放すのはもちろん、広く他の人とシェアすることにはとてつもなく抵抗するはずではないか。
なぜこのケースでは、富裕層たち、あるいは機関投資家はNISAに大賛成だったのであろうか。それは、仲間を増やしたほうが、自分たちにとって得だからである。買い手が増えれば値上がりする。そうすれば自分の持ち株は上がる。だから仲間は増やしたい。つまり「自分も儲かるから、貴方も一緒に儲けましょう」ということなのである。
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