イーロン・マスクに敗れた「カラ売り屋」冬の時代 長期の上げ相場という逆風、放置されるイカサマ企業
去る1月15日、「ウォール街で最も恐れられるカラ売り屋」の異名をとったニューヨークのヒンデンブルグ・リサーチが突然廃業を発表し、関係者を驚かせた。
同社は、コネチカット州出身のユダヤ人、ネイサン・アンダーソンが2017年に旗揚げした、アクティビスト型カラ売り専業会社だ。株価が過大評価されている企業を探し、カラ売りを仕掛けて売り推奨の調査レポートを公表、株価が下がったところで買い戻して利益を得る。
ヒンデンブルグ・リサーチは2023年1月、インド屈指の財閥でモディ首相とも結び付きの強いアダニ・グループの不正会計を指摘、同グループの時価総額の6割を超える1450億ドル(約22兆6200億円)を吹き飛ばし、話題となった。
2020年9月には、水素トラック・メーカー、二コラ社が、エンジンも何も付いていないはりぼてのトラックを坂道で転がし、走るように見せかけた動画で投資家を欺いたと暴露した。最高値60ドル台だった同社の株価は10ドル台まで急落し、創業者で会長のトレヴァー・ミルトンは辞任に追い込まれ、ニューヨーク連邦地裁で、証券詐欺などで懲役4年の実刑判決を受けた(控訴中)。
トランプ支持者の投資会社も標的に
その他、半世紀以上にわたる名うてのコーポレート・レイダー(企業襲撃者)でトランプ支持者、カール・アイカーンの投資会社アイカーン・エンタープライゼスや、ヘルスケア企業のクローバー・ヘルスなど、8年間で少なくとも75の会社の株をカラ売りした。
廃業の理由について、ヒンデンブルグ・リサーチのアンダーソンは「われわれは目指していたことは達成した。揺さぶるべき企業帝国は揺さぶった。しかし、企業と闘っているか、闘いの準備にほとんどの時間を費やした過去8年間は、負担の大きなものだった」と述べ、健康上の理由や業績不振等の理由ではないとした。
また将来にわたって家族を養うのに十分な金を稼いだので、今後は自分の手法を他者も活用できるよう、リソースや研修資料を共有し、インデックスファンドなどストレスの少ない投資を行いつつ、趣味、旅行、婚約者や子どもと過ごす時間を大切にするとしている。
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