超有名な医学誌が発表、「1日のお酒の適量」とは? アルコールの「がん発生リスク」もここまで判明

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まず、アルコールは日本を含め、多くの国で文化的に日常生活に溶け込んでおり、「飲酒は普通のこと」として受け入れられている。この文化的な認識が規制を難しくしている。

また、多くの人々が「アルコールはタバコほど有害ではない」という誤解を持っていることも、規制が進まない理由の1つだ。

アルコール規制の世界の動きは?

世界保健機関(WHO)は、非感染性疾患(NCDs)の世界的な負担を軽減する戦略の一環として、長年にわたりアルコール規制を推進してきた。

WHOが推奨する主な対策には、アルコール飲料への課税強化、広告規制の厳格化、そしてがんリスクを含む健康への影響を消費者に知らせる警告ラベルの導入が含まれている。

いくつかの国は、アルコール規制においてすでに先進的な取り組みを行っている。

例えば、カナダでは2017年、ユーコン準州の政府がアルコール飲料にがんリスクを警告するラベルを導入した。この試みはアルコール業界の強い反発を受けたが、同様のキャンペーンの先駆けとして注目された。

アイルランドでは2018年に「公衆衛生(アルコール)法」が施行された。この法律では、アルコール製品にがんリスクに関する情報を表示することが義務付けられるなど、アルコール規制の分野で他国の模範となる包括的なアプローチを採用している。

日本では、未成年へのアルコール販売禁止や飲酒運転の厳罰化といった法律があり、また、アルコール依存症についての啓発活動も行われている。

しかし、アルコール摂取とがんのリスクについては、まだ大きくは議論されておらず、この点で一般市民の理解は大きく欠落している。世間には、芸能人がお酒を美味しそうに飲む広告があふれている。

アルコールが発がん性物質であるという認識が世界的に広がる今、一般市民にそのリスクを伝え、保護するための政策を早急に実施する必要があるだろう。

もちろんリスクだけを強調すればよいわけではなく、お酒を通して経済やコミュニケーションが活発化するなど、メリットにも目を向け、バランスの取れた議論のうえで、社会的コンセンサスを作るのが前提だ。

日本がこうした取り組みを導入することは、アルコール関連のがん発症率を低減し、より健康的な社会を育むための重要なステップとなる。

歴史的な教訓や国際的な情報を活用しながら、アルコールに対する認識と規制を21世紀の現実に合わせて再定義することが求められている。日本がこの分野でリーダーシップを発揮することで、世界的な公衆衛生の向上にも寄与する道もあるのだ。

谷本 哲也 内科医

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たにもと てつや / Tetsuya Tanimoto

1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。

 

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