モヤモヤする「フジテレビのガバナンス問題」 中居正広さんは芸能界引退発表、関係者も言及

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また「信頼を揺るがすわけにはいかないという覚悟はどの局にも、どのメディアにもあると思う」と齋藤社長が話すように、実際、TBS、日本テレビ、テレビ東京が社内調査を行うことを表明しています。すでに信頼は揺らいでいるとも言えますが、自浄しようとしていることは感じ取れます。

ガバナンス問題として捉えるべき理由についても齋藤社長は指摘しています。それはフジ・メディア・ホールディングスがうたうグループの人権方針との整合性です。ホームページに掲載されている内容を見ると、「本方針は、当社グループが人権を尊重しつつ事業活動に取り組むことを明確にするために定めるもの」と説明があり、「差別・ハラスメントの禁止」や「メディアグループとしての人権尊重」など具体的な記載もあります。それゆえに「この通り、ぜひ誠実に実践していただきたい。本当に誠実な対応が迫られていることを強く感じています」と強く訴えていました。

市場をリードするのはYouTube

フジテレビの1月17日の会見をきっかけに生まれたモヤモヤの要因は“誠実性に欠ける”ものが大きかったのではと思わされます。これまで以上にメディアに対して、倫理的な姿勢が厳しく求められています。収益力の高さだけで市場をリードできる時代ではないことを物語っていると思います。

数字のうえでもそれは明らかです。調査会社のメディア・パートナーズ・アジアによると、約4兆円規模の日本の映像市場のなかで、今や最も収益を上げているのはYouTubeです。テレビ局各社を追い抜き、YouTubeは全体のうち12%のシェアを誇ります。

2024年動画市場
メディア・パートナーズ・アジアが調査したアジア主要国別の2024年動画市場規模。オーストラリア、日本、韓国、インド、インドネシア各国の事業者シェアランキングを示す(画像:メディア・パートナーズ・アジアの資料より)

これに続くのがフジテレビを含む地上波テレビ局各局。動画配信プレイヤーが主役の座を奪うアジアの主要国と比べると、日本市場だけがYouTubeを除き、テレビ局が上位を占めるという特殊な状況です。

ただし、テレビ局の安泰が今後も続くとは限りません。この5年のうちで、アジア市場全体におけるテレビ事業の収益はさらに減少が見込まれ、YouTubeやTikTokなどのソーシャル系が6兆円規模に成長することが予想されています。かつて地上波テレビ局が強かった韓国市場では今やKBSとSBS、MBCの3局合わせて全体の1割程度にとどまります。世界的には旧態依然のテレビ局が市場をリードする時代は終わっていることが数字から示されています。

フジテレビが再びコンテンツで勝負して収益性を確保するにも、世論からの信頼を取り戻すにも、経営管理体制の健全化がカギとなっていくでしょうが、いばらの道であることが目に見えています。

長谷川 朋子 コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事