そこで、筆者らは景気ウォッチャー調査に示されている判断コメントのほうに注目した。前述の例で言えば、「求人数が減少している」は雇用需給が「ルーズ」になっていることを示すコメントであり、「求職者数が前年比では減少傾向にある」は雇用需給が「タイト」になっていると再定義できる。
具体的には、2010年1月~12月のコメント(1891件)に対しChatGPTを使って「タイト」「ルーズ」「その他」のラベリングを行った。ラベリングされたコメントを学習データとし、2011年以降のコメントを機械学習によって分類したうえで、2010年1月以降の雇用関連業種のコメントを「タイト」を100ポイント、「ルーズ」を0ポイント、「その他」を50ポイントとして月ごとの平均値を「AI雇用需給DI」として作成した。
結果は図に示した通りである。
2017年後半にかけて「AI雇用需給DI」は上昇していたことから、景気ウォッチャーは労働市場がタイト化していたと判断していたが、その後は低迷していることがわかる。コロナ後も水準はほとんど変わらず、低位安定といえる状況が続いていることがわかった。
「低位安定」は有効求人倍率と似ている
世の中では人手不足問題が注目されているが、「AI雇用需給DI」がコロナ前のピークを回復できずに低位安定となっている。この動きは、有効求人倍率の動きとよく似ている。
有効求人倍率も2018年9月に1.64倍まで上昇したのがピークであり、足元(2024年11月)の1.25倍はこれを大きく下回っている。
筆者らが作成した「AI雇用需給DI」のほうがピークを付けたタイミングが早かったため、「AI雇用需給DI」を1年先行させて両者を比較すると、大まかな動きは似ているように思われる。
今回作成した「AI雇用需給DI」を参考にすると、有効求人倍率は今後も低位安定が続く可能性が高い。すなわち、中小企業を中心に労働分配率を引き上げてまで労働者を確保する動きは広がらないことが予想される。
2025年は春闘の結果に対して、月次統計で示される賃上げ率の数字は物足りない結果になっていくと、筆者は予想している。
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