「人手不足だから賃上げ」が中小は望み薄の現実 AIで統計の落とし穴を補って分析してみた結果

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労働市場に関するソフトデータ(アンケート調査)として有名なのは景気ウォッチャー調査の雇用関連DIである。「人材派遣会社」「求人情報誌製作会社」「職業安定所」「民間職業紹介機関」「学校」「新聞社[求人広告]」などに所属する景気ウォッチャーの回答を集計し、「雇用関連DI」としてセンチメントを数値化している。

もっとも、この「雇用関連DI」は、雇用関連業種の景気ウォッチャーによる「景気判断」を示すものであるという問題がある。

具体的には、「今月のあなたの身の回りの景気は、3カ月前と比べてよくなっていると思いますか、悪くなっていると思いますか」という質問について、回答者(景気ウォッチャー)が①良くなっている、②やや良くなっている、③変わらない、④やや悪くなっている、⑤悪くなっているの5つから1つを選ぶ。

雇用関連については、選んだ根拠として、(1)求人数の動き、(2)求職者数の動き、(3)採用者数の動き、(4)雇用形態の様子、(5)周辺企業の様子、(6)それ以外、から根拠を選ぶ。

このような調査方法では、雇用市場が「タイトなのか?ルーズなのか?」という判断は難しい。

雇用関連業種の景気判断=雇用需給、ではない

例えば、2024年12月調査でも「求人数が減少している」として景気がやや悪くなっているとした回答があった一方で、「求職者数が前年比では減少傾向にある」という理由で景気がやや悪くなっているとした回答もあった。

しかし、求人数が減少していることについては、雇用市場をルーズにしている(賃金が上がりにくい)要因であり、求職者数が減少していることについては、雇用市場をタイトにしている(賃金が上がりやすい)要因と考えることができるため、雇用需給という観点からは逆方向の動きである。景気ウォッチャー調査ではこれらが無差別になってしまっていると言える。

その結果、景気ウォッチャー調査の雇用関連DIは、就職件数と連動する統計になっている。

求人と求職の変化によってマッチングがどの程度生じているのかという情報も重要だが、やはり雇用市場の需給バランスが捉えられている統計ではない。

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