日銀の氷見野良三副総裁は1月14日の講演で、2025年の春闘について「2024年度に続いて強い結果を期待できるのでは」と述べた(時事通信)。
大手企業の多い春闘では、比較的高めの賃上げが実現する可能性が高い。もっとも、賃金動向に下振れリスクがあるとすれば、大手企業が中心の春闘ではなく、中小企業が賃上げに追随できるかどうかである。
春闘においても中小企業の分類に注目が必要だが、それ以上に毎月勤労統計などでマクロ経済レベルでの賃上げ動向を確認していく必要があるだろう。
「賃上げで人材確保」せずに倒産する中小企業
2024年も春闘の結果に対して毎月勤労統計の所定内給与の前年比はやや伸び悩んでいる印象である。
中小企業については、円安や原材料高によってコストが増加し、利益が圧迫されている。労働分配率を引き上げる余裕はあまりないだろう。したがって、将来の事業規模拡大・維持のために労働者を増やしたりつなぎ止めたりする動きが広がるかどうかが、重要である。
事業活動の継続が難しければ、人手不足倒産として事業を畳んだり、事業規模を縮小させたりしていくという選択肢が採られる。
東京商工リサーチによると、2024年の負債1000万円未満の倒産件数は536件となり、4年ぶりに500件を超えた。厚生労働省の有効求人倍率は2022年11月~2023年1月の1.35倍をピークに低下している。
これらを考慮すると、中小企業の賃上げは限定的となる可能性が高いと言わざるをえない。
中小企業が人手不足にどの程度対応しようとしていくのか。これが賃上げ動向には重要と考えられるため、求人統計の先行指標を考えてみたい。
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