【産業天気図・通信業】番号持ち運びで携帯業界沸く。固定通信は光急拡大のNTTに懸念浮上

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06年10月始まった番号持ち運び制度(MNP)が追い風となり、携帯電話業界は例年以上の激戦を繰り広げている。顧客獲得費用がかさむものの、端末の買い換え需要を喚起するきっかけとなり、携帯事業者の中ではMNPを味方につけたau(KDDI<9433.東証>)が契約数を好調に伸ばしている。一方、NTTドコモ<9437.東証>は11月に創業以来初となる契約数の純減に転落。携帯電話が最も売れる年度末商戦(07年3月)に照準を合わせて販売攻勢を仕掛けると見られる。
 買収当初の予想よりも善戦しているのが、4月にボーダフォン日本法人を呑み込んだソフトバンク<9984.東証>だ。10月のMNPで顧客が動きやすくなると他社へ逃げていく恐れが大きいと見られたが、新端末の大量投入や料金プランの刷新などで負けムードを払拭。11月も契約者数の純増をかろうじて確保した。しかし新プランとして公表した「ゴールドプラン」(ソフトバンク利用者同士の通話やメールが無料)の基本料割引などは1月15日までのキャンペーン限定施策でしかない。ソフトバンクとしては年度末商戦に向けて新たな施策を打ち出し、顧客獲得に努める必要がある。ひとまず顧客流出に歯止めをかけたものの、ドコモやauに比べて資金的な余裕がある訳ではない。年明け以降の新施策が他社に見劣りし、3月商戦に乗り遅れるようなことになれば07年度の戦いが一層厳しくなる。ドコモが春商戦に向けて相当数の端末を投入する予定だけに、好調を持続するauと比べるとソフトバンクの勢いが削がれる可能性もある。
 固定通信では、NTT<9432.東証>グループが積極的に推し進める光ファイバーによる固定インターネットサービス「Bフレッツ」の拡大が続いている。11月末現在でNTT東西合計したBフレッツの契約件数は514万件。ADSLでトップの座を維持するソフトバンクの「ヤフーBB」は9月末現在で514万件なので、NTTグループの「Bフレッツ」は12月で「ヤフーBB」の契約件数を抜き去ることが確実だ。KDDIはこの動きに対し「NTTとの対抗軸を作る」(小野寺正社長)として、個人向けの光ファイバーサービスを展開する東京電力<9501.東証>と提携し、新ブランドによる「ひかりONE」を展開しているが、NTTを凌駕するほどの優位性には乏しく、爆発的拡大には至っていない。ソフトバンクは携帯電話事業の拡大に経営資源を集中しており、ADSLサービスの「ヤフーBB」拡大を加速させることは困難だ。
 これらを考えると、07年もNTTの「Bフレッツ」が圧倒的に有利だ。しかし、11月30日に総務省で開かれた情報通信審議会で、通信事業者を集めた合同ヒアリングの場では、NTTの過剰な価格攻勢や接続条件の変更・緩和など、光ファイバーサービスに対する批判や注文が相次いだ。現状、光サービスにおけるNTTグループのシェアは7割近く。これに対しソフトバンクの孫正義社長は「こういう状態で本当に公正な競争原理が働いていると言えるのか」と指弾。つまり、NTTは独走状態で「Bフレッツ」を増やせば増やすほど、批判が強まるというジレンマを抱えている訳だ。
 これまでNTTと他事業者の言い分はまったく平行線を辿っていたが、情報通信審議会の議論を経てNTTからの光ファイバー貸し出し方法や価格設定など、07年には具体的な動きが出てくると見られる。その動きは少なくともNTTグループが一段と有利になるものではないはず。2010年に光3000万回線獲得を目指してひた走るNTTグループだが、07年度に総務省も絡んだ事業者間で展開される議論の行方次第で、減速を余儀なくされる状況が発生しかねない。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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