「声」は見た目よりものをいう 竹内一郎著

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その上で、“筋トレ”を推奨している。声質は訓練すれば飛躍的によくなるらしい。「発声」とは声帯という筋肉の運動であり、鍛えれば鍛えるほどよくなるのだという。実際、高い声だった人が低音の魅力的な声に、舌っ足らずの若い女性が真摯な大人の女性の声に、といったように訓練によって驚くほど声が変化する人を著者は何人も見てきた。

実は著者の本業は、劇作家兼演出家。本書の中盤からは、日々俳優たちと格闘しながら発声の研究を積み重ねてきた、演出家ならではの声を鍛えるアドバイスが満載だ。いい声を出すための姿勢や満員電車の中でもできる呼吸法、みぞおちや背中の鍛え方などについてイラスト付きで解説しているので、読者もすぐにトレーニングを始められるだろう。

さらに4章では、アクセント・イントネーション・強調・リズム・間・母音と子音を操る技術など話し方のコツも紹介しているので、特に大切なプレゼンや面接を控えた人には何らかのヒントが得られるかもしれない。

ただし、何よりも心を込めて言葉を伝える気持ちが重要だと著者は訴える。特に声が「大きい」と「通る」は異なると指摘しているのが興味深い。たとえ声が大きくても、その場にいる人に「届かせる気持ち」がなければ
声は届かないと強調している。

果たして自分は会議などにおいて、メンバー全員にまんべんなく意識を向けながら真剣に意見を述べているだろうか。そもそも普段から席が近い相手に対しても、用件はメールやチャットで済ましてしまい、声をかける機会を自ら奪っているのかもしれない--読み進めながら、ふと日頃の振る舞いを思い返してしまうことだろう。

本書は、「声」にスポットを当てているが、つまるところ、話し方の極意や人と人が面と向かった時のコミュニケーションのあり方を提示している一冊なのである。

潮出版社 1260円

(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)

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