ヤギ5頭飼って知った「意外と戦闘的」な食事風景 「頭突きで草の争奪戦」見守る日々をイラストで

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雫は一番身体のサイズも小さいし、カヨがいまだに子どもとして扱うために、カヨの横にいても頭突きを受けないで美味しい草を食べられる。末っ子特権である。

ただしそれもだんだんと薄れてきて最近は頭突きされて違う場所に移るようになってきている。カヨや茶太郎が見向きもしない(おそらくはヤギの中では御馳走ではない)ヨモギなどをせっせと食べているのを見ると、ちょっと切ない。

自分の身体の大きさに目覚めた銀角

銀角はおっとりとして人間にも一切頭突きをしたことがない、とても優しいヤギなのだが、だんだん身体とともに角も大きくなってきた。これまでは玉太郎の弟分として大人しくしていたのだが、どうやら自分の身体の大きさに目覚めたようで、玉太郎を負かすようになった。

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とはいえカヨや茶太郎にはまだまだ敵わない。銀角が餌を運んでいるときに外に走り出ていくことは、めったにない。

辛抱強く自分が食べる分が運び込まれてくるのを待つ。玉太郎のように一口でも多く早く新しく美味しい草を食べるために外に出ていくタイプとは真逆だ。 

このように食事は彼らの食の好みだけでなく強弱関係や性格がはっきりと出る場なのである。ヤギ牧場では横に板を渡した隙間から頭を差し入れた先に餌箱を置いている。

隙間は頭がギリギリ通る高さになっている。何も知らないうちは食べにくそうだと思っていた。

しかしあの方式がお互いに頭突きをしないので、全員が平等に餌を食べることだけに集中できる。実によく考えて作られている。ただしあの餌台を適用するには全頭徐角、つまり角を切り落としておく必要がある。茶太郎のような大きく曲がりくねった角をくぐらせるのは、ちょっと難しい。

内澤 旬子 文筆家、イラストレーター、精肉処理販売業

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うちざわ じゅんこ / Junko Uchizawa

1967年、神奈川県生まれ。『身体のいいなり』で第27回講談社エッセイ賞受賞。著書に『世界屠畜紀行』『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文春文庫)、『内澤旬子の島へんろの記』(光文社)、『カヨと私』(本の雑誌社)など多数。2014年に小豆島に移住し、現在は、ヤギのカヨ、茶太郎、銀角、玉太郎とイノシシのゴン子、ネコの寅雄とともに暮らす。

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