では売れていないかというと、そうではない。中古マンション市場では、成約戸数が増加し、販売単価は上昇し、在庫は減少している。先ほどの新築市場の逆が起きている。新築の供給エリアはかなり偏りがあるのに対して、中古にはそれがない。市況を判断するには中古市場をウォッチする必要がある。
値引きしながら在庫処分している戸建て市場
新築分譲は増えた在庫を削減するため、値引きしながら在庫処分を行っている。そもそも在庫が増えたのには理由がある。コロナ禍になり、ステイホームで家に対する不満やリモートワークスペースのニーズから住み替えが増え、需要急増に沸いた。そこで街場の不動産屋は土地を自ら仕入れて、新築分譲市場に大挙して参入した。建築費の高騰も重なり、新築分譲戸建ての価格は2割上昇した。
しかし、その市場は長くは持たず、コロナが収束するにつれて売れ行きは悪化する。決定的なターニングポイントは全国旅行支援が再開された2022年10月になる。ここから、在庫は急速に積み上がり、体力のある会社ほど値引きしてでも在庫の回転を急いで、今に至っている。
供給がいっこうに増えない戸建て用地の地価は高止まり傾向が継続している。高齢化社会の中で死亡者数が増え続けて、相続は発生しているものの、ほとんどの実家は親が住んでいた状態に近い物置きとなっており、空き家所有者の5年以内での売却意向は17.3%しかない(国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」)。
なぜなら、相続資産のうち金融資産と不動産資産がそれぞれ大きな割合を占めるケースが多く、固定資産税などを支払う余力はあり、特段急ぐ理由もないからだ。そして、新築価格がコロナ前の2割増しなので、売れ行きが悪くなった中古戸建て価格も価格がさほど落ちてはいない。
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