「1丁の護身用の銃」巡り変貌したイラン家庭の姿 映画「聖なるイチジクの種」の制作の裏側

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外部に漏れないように信頼できるスタッフ、キャストを集め、安全を確保するために少人数での撮影を敢行。撮影はほぼ物語の時系列通りに行われた。そしてその撮影した映像は、ドイツに住む編集技師アンドリュー・バードのもとに送られ、撮影と同時進行で秘密裏に編集作業が行われた。

またラスロフ監督は、観客に反政府デモの様子を臨場感を持って実感してもらうために、脚本執筆の初期段階からSNSに出回っているデモの動画を取り込むことを決意。そのときイランで何が起こっていたのか、観客はその惨状を目の当たりにすることになる。

イランを脱出した監督の言葉

イランを脱出し、カンヌに到着したラスロフ監督は声明の中でこう主張している。

「この映画に出演したことで、彼ら(俳優たち)は起訴され、出国を禁じられました。カメラマンの事務所は強制捜査に遭い、機材はすべて押収されました。音響技師がカナダへ出国することも妨害されました。諜報機関は映画クルーの取り調べの際、私にカンヌ映画祭からの撤退を促すよう要求しました。クルーに対し、映画のストーリーを認識しないまま私に操られてプロジェクトに参加させられた、と丸めこもうとしていたのです」

そのうえで表現の自由の制限や抑圧は正当化されるべきではないと訴えかけるラスロフ監督。167分という上映時間も忘れてしまうくらいの緊張感と没入感を体感できる映画となっている。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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