「1丁の護身用の銃」巡り変貌したイラン家庭の姿 映画「聖なるイチジクの種」の制作の裏側

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それまで国民に我慢を強いてきたイスラム支配体制に反旗を翻した女性たちが、スカーフを脱ぎ捨て自由を求めたが、そんな彼らを鎮圧しようとする勢力との対立は激化し、多数の死傷者や逮捕者が続出した。そこには生活苦をめぐる政府への不満という要素も密接に絡み合っていたとも言われている。

一方のイラン当局は、市民に恐怖心を植え付け、権力強化を図るために、死刑の適用を拡大。国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルの2023年調査によると、イラン全国31州のうちの30州で、853人の死刑を執行。

罪状は、薬物関連犯罪、殺人、神への敵意と地上に堕落を広げること、などがあったが、そのうちの少なくとも545件は、国際法上、死刑となるべきではない行為に対する違法な処刑であったと指摘している。

イラン革命以降、ヒジャブが強制される

ちなみに近年のイラン女性たちが人前でヒジャブをつけるように強制されるようになったのは1979年のイラン革命以降のこと。それまでのイランを統治してきたパフラヴィー朝は西洋化・近代化を推し進めていたが、民衆のデモにより王朝が打倒された後は、イスラム法学者を最高指導者とする政教一致の統治体制に移行した。

女性はヒジャブをつけて髪を隠し、身体も露出のない衣装を着用することが求められるようになったが、それは政府に対して、そして宗教に対して服従していることの象徴であり、逆にヒジャブをつけないことは反権力の象徴とみなされた。

聖なるイチジクの種
政府によるインターネット規制が厳しいイランだが、娘たちはVPN経由で、デモに参加する市民を警官が暴力的に鎮圧する映像を視聴していた。©Films Boutique

本作のメガホンをとったモハマド・ラスロフ監督は、1972年イラン生まれ。大学で社会学を学ぶ傍ら、ドキュメンタリーや短編映画で映画制作のキャリアをスタート。2017年の『ぶれない男』でカンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリを、2020年の『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭最高賞の金熊賞を受賞している。

2022年夏に収監されていたラスロフ監督は、監獄内で「女性、命、自由」の運動が起きていることを知り、やがてこの運動を支援する映画をつくりたいと思うようになる。だが当然ながら撮影は困難を極めた。

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