「西岡先生、自分はこのままでは不合格になると思います。正直、地理に関しては、全然自信がないし、ここで西岡先生から授業を受けても、点数が上がる未来が自分の中で見えないんです。でも、世界史だったら、もうちょっと自習の時間を増やせば、点数が上がる気がするんです。だから、本当に申し訳ないんですけど、地理、捨ててもいいですか」
そんなふうに考えていたとはつゆ知らず、僕は驚いたわけですが、しかしすぐにこう言いました。
「わかった。じゃあ、地理は捨てて、世界史に全振りしなさい」
僕は彼の言葉を聞いたときに「彼は受かるだろうな」と確信しました。実際、地理を捨てて世界史を勉強した結果、世界史の点数が模試や過去問演習をしていたときよりも10点伸び、見事東大に逆転合格を果たしました。
「捨てる覚悟」ができていた
なぜ僕が彼の言葉を聞いて「彼は受かる」と思ったのか。それは、彼が「捨てる覚悟」ができていたからです。
受験生は直前の時期には、「とにかくいろんなことをやらなければならない」と考えてしまいがちです。この科目の勉強もしたい、あの科目の復習もしたい、とさまざまなことを考えてしまう人がほとんどです。
もちろんそれは悪いことではなくて、貪欲にさまざまな科目の勉強をすることで合格をもぎ取る受験生も多いです。しかし、本当にトップ大学を目指している受験生には、「捨てる」という選択も重要なのです。
冷静に考えて、受験生にはすべての科目の勉強を十分にできるわけはありません。時間的な制約もありますし、やり過ぎてしまって体調を崩してしまっては本末転倒です。「やる」という選択ではなく、勇気を出して「やらない」という決断も重要になってくるのです。それをしっかりと自分で考えて選んでいる受験生は、最後の最後まで伸びます。
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