ニューヨークの死体調査官が目撃した悲惨な現場 「死体と話す NY死体調査官が見た5000の死」

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死体と話す: NY死体調査官が見た5000の死
『死体と話す: NY死体調査官が見た5000の死』(河出書房新社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

数か月後、事件現場からオフィスに戻ってきたランディが、わたしの机の隣に巡業バッグをどさりと置いてわたしを見た。

「公営住宅の最上階の階段の踊り場で亡くなっていた10代の少女を調べたのはきみだったよね?」

「ええ。火をつけられた小柄な少女でしょ。104番通りの。何かあったの?」

「さっきまで東112番通りの公営住宅で捜査してたんだよ。被害者は同じようにレイプされて絞殺されていた。でも火傷はしていない。被害者は最上階の階段の踊り場で壁に寄りかかっていた。レニーが現場にいた。彼はきみの事案にも関わったんだってな。その現場を見て、あの事件を思い出したって言ってたよ」

少女たちを殺害したのは誰か

今回の被害者はラシーダ・ワシントンという、ブティックでバイトしながらファッションを学ぶ学生だった。亡くなったのは18歳の誕生日の三日後だった。被害者はこの二人にとどまらなかった。14歳の少女一人と、15歳の少女が二人。他に、髪に小さな髪留めをつけた13歳の少女もいた。泣き叫ぶ少女をよそに、男はアナルセックスを強要して「女らしく受け入れろ」と脅したという。別の少女は、こんなハンサムな男に犯されるなんておまえは「ラッキー」だと言われたという。それも、ナイフを突きつけられながら、だ。

それ以前に13歳のパオラ・イエラも殺害されていた。やや細身の体つきに色白の肌、天然パーマで暗褐色の髪をしたパオラは、学校から帰って来ると、建物入口のブザーを鳴らして母親に中に入れてくれと頼み、それからエレベーターに乗った。そのエレベーターに殺人犯も一緒に乗り込んだのだった。その後彼女の遺体は、FDRドライブの近くをジョギングしていた人によって発見された。アナルセックスを強いられたあと、刃物で刺し殺されていた。腕にニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの腕時計をはめていた。

少女たちの体内から見つかった精液はすべて一人の加害者に結びついていた。だが一体誰なのか? 1997年当時、すべての凶悪犯のDNAの型を登録することはまだ義務づけられておらず、有罪判決を受けた犯罪者のデータベースはまだ少なかった。データベースで一致しなければ、現場で集めたDNAも役に立たなかった。

「ニューヨークの死体調査官が容疑者に抱いた感情」に続く

バーバラ・ブッチャー

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10代の頃から鬱病やアルコール依存症に苦しみ、そのカウンセリングの過程で、死体捜査官の仕事に出会う。克服後、1992年にNY市検死局の死体捜査官となる、女性で2人目の首席捜査官を務め、2014年退職。

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