マッチングアプリで日本の結婚が増えぬ本質理由 上位3割の恋愛強者に便利なツールを提供しただけ

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残念ながら、マッチングアプリは婚姻増の救世主にはなりえないばかりか、むしろさらなる婚姻減への副作用を起こすことにもなりそうです。

手のひらで使える便利なデジタルツールであるがゆえに、冷徹なまでに能力が可視化され、個人力によって恋愛可否が決まる世界線が生まれました。要するに、恋愛や結婚の個人戦化、自己責任化と言えます。

本来、結婚というものは1対1で執り行うものでありながら、両者を取り巻く共同体メンバーや社会含めて相互に関係しあうものであったはずです。そうしたしがらみが鬱陶しい場合も当然ありますが、だからこそ自分だけの力ではどうにもならないことも実現できたわけです。

問題は「出会いがない」ことではない

見合いが衰退した背景には地域共同体の崩壊があり、職場結婚が減った背景にも、疑似家族だった職場共同体の機能変化があります。伝統的な見合いが復活することもないですが、せめて職場での出会いや結婚というものに対して、過度に「個人の問題だから」「セクハラ扱いされるリスクがあるから」と腫れ物に触るようなことではなく、もう少し柔軟に結婚したい社員を応援したり、言祝ぐ方向に多少戻ってもいいのではないかと思います。

結婚した後の社員を支える施策は充実していますが、これから結婚するだろう独身に対する温かい目も必要です。「誰の力も頼らずに自分の力だけでなんとかする社会」というのは、決して自立社会ではなく、それこそが孤立社会なのでしょう。

とはいえ、このマッチングアプリという仕組みそのものを否定しているわけではありません。自治体における婚活支援では、AIマッチングアプリでの出会い創出だけではなく、出会った後の有人によるサポートなどハイブリッド型の伴走型支援を実践しているところもあり、それはそれで「令和なりのお膳立て」のひとつとして評価できると思います。

しかし、実は問題なのは、「出会いがない」ことではなく、90年代後半の就職氷河期から始まった、「若者よ、自分の力でなんとかしろ」という風潮であり、「社会や人とのつながりがない」ということの表れではないかとも思うのです。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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