"昭和攻め"Netflix「阿修羅のごとく」実現の裏側 宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが四姉妹

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そして、令和の時代にNetflixで再びドラマ化されたのです。是枝監督が四姉妹を演じる女優に合わせてアップデートし、多少脚色していますが、大枠のキャラクターやストーリー設定はオリジナルを生かして作られています。

なので、昭和の香りが漂うドラマでもあります。宮沢りえが演じる長女の綱子は夫を亡くした後、生け花の師匠として生計を立てる自立した女性というイメージだけに終わりません。妻帯者と関係性を持つ顔も見せます。その相手役に内野聖陽が起用されています。

また尾野真千子の次女・巻子は会社員の妻で一男一女の子どもを持つお節介焼きの専業主婦という昭和らしいキャラクターです。夫役の本木雅弘もザ・昭和のサラリーマンを好演しています。

阿修羅のごとく
尾野真千子が演じる(左)次女・巻子は昭和の時代を象徴するような家庭の専業主婦。モーレツサラリーマンながら四姉妹家族の間を取り持つ夫役の本木雅弘(右)も存在感がある(画像:Netflix)

蒼井優が演じる独身の三女・滝子は恋愛よりも仕事のタイプという現代にも通じるキャラクターですが、松田龍平が扮する口下手な男とのリアルな恋に踏み出すのは、推し活という概念がこの時代にあったら違っていたかもしれないと思ってしまいます。

広瀬すずの四女・咲子役もどの時代にも存在するモテ女ですが、ボクサーの卵と同棲し、健気に男を信じる辺りはやっぱり昭和感があふれています。

阿修羅のごとく
蒼井優が演じる三女・滝子は現代にも通じるキャラクターだ。松田龍平が扮する口下手な男とのリアルな恋に踏み出し、女心の変化を抜群の演技力で表現する(画像:Netflix)

蒼井優と広瀬すずの演技合戦も

時が止まっている登場人物の恋愛観や生き方にどうしても引っ掛かる部分は確かにあります。でも、“古い”と切り捨てるのはあまりにももったいない気がします。その時代にはその時代の凄みを感じることができるからです。

父親(國村隼)の愛人問題をフックに、四姉妹たちが自己を見つめていく過程のなかで、底知れぬ心のおもむきをはっきりと感じ取ることができる台詞や表情がちりばめられています。

たとえば、次女の巻子(尾野)が夫の浮気を疑って「どこで誰といるか、うすうす知ってるのよ。でもね、あたし、黙ってるの」と母親(松坂慶子)にぼやくと、「そうだよ。女はね、言ったら負け」と返すこの母娘のやり取りにも表れています。これにはその時代の美学を感じます。

阿修羅のごとく
耐え忍ぶ昭和の女性像を松坂慶子(右)が演じる。母親を心配する娘たちのシーンが描かれる(画像:Netflix)

また考え方から経済状況まで相反する三女の滝子(蒼井)と四女の咲子(広瀬)の2人の対話は特に4話目以降、目が離せなくなるほど。蒼井の名演技による「きょうだいって、変なものね。ねたみ、そねみも、すっごく強いの。そのくせ、きょうだいが不幸になると、やっぱり、たまんない――」の台詞が耳に残ります。

阿修羅のごとく 広瀬すず
広瀬すずが演じる四女の咲子の情熱的なキャラクターも魅力的に映る(画像:Netflix)
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