トヨタが仕掛ける雇用改革 期間従業員も組合員に

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トヨタが仕掛ける雇用改革--期間従業員も組合員に
期間従業員を最大限に活用することで、労務費を抑えつつ増産に対応してきたトヨタだが、それもそろそろ限界。
 ただ、労使挙げての組合員化・正社員化は、近い将来の競争力喪失という問題もはらんでいる。
(週刊東洋経済2008年1月26日号より)

寒さも一段と厳しくなった昨年12月12日。愛知県豊田市内のトヨタ自動車労働組合の組合会館「カバハウス」において、トヨタ労組の臨時大会が開催された。その場で決定したのが、「期間従業員の組合員化」である。期間従業員とは、正規の社員ではないものの、数カ月間の期限付きで直接雇用される従業員。主に繁忙期の増産要員として縁の下を支えてきた立役者である。

対象になったのは、すべての期間従業員9000人のうち、3500人。トヨタ労組の全組合員数が6万人だから、ざっと全体の6%に相当する。まず、今年4月から200人、5月から300人と、契約期間が1年以上の「シニア期間従業員」を先行させ、その後も1年を超えた者から順次、組合員化していく方向だ。

もっとも、トヨタで非正規雇用者が組合員化されるのはこれが初めてではない。2002年には「スキルド・パートナー」と呼ばれる定年後の再雇用者が、06年にはパートタイマーが労組に加入。ただ人数は1100人、100人と少なく、今回の規模はその比ではない。雇用形態としては非正規のままでの労組加入という、日本の製造業を代表するトヨタの動きが、今後産業界全体にどう波及していくか注目される。

実はトヨタ単体の従業員(正規社員)数を見ると、04年3月期の6.5万人から07年3月期には6.7万人とさほど増えていない。同じ時期に、臨時従業員が8100人から1.8万人へ激増しているのに比べると、その差は一目瞭然。業績の伸びに対し労務費が抑えられているのも、こうした“バッファー”を有効活用してきたからこそだ。だが、国内で年間400万台以上に達する増産ラッシュを前に、目先の弥縫策ではそろそろ限界に来ている。

「現場の一体感」を希求

もともと期間従業員の組合員化は、喪失しつつある職場の一体感を回復したいという、労組側からの提案だった。特に悩んでいたのが製造現場だ。問題は団塊世代の退職に伴う技術の伝承だけではなかった。鶴岡光行・トヨタ労組執行委員長は、「連絡事項で招集をかけるにも、『あなたは来て』『あなたは(来なくて)いい』と分けなきゃならない」と、扱いの難しさを指摘する。昔のような農閑期に出稼ぎで来た期間工と違い、現在はフリーターなどの若者も多い。工場では約3割が非正規と見られ、これだけ増えたにもかかわらず、彼らの胸中にくすぶる“疎外感”をもはや放置できない。

組合員になれば、正社員が現在平均月6000円の組合費を天引きされるのと同様、1000円程度が徴収される。その代わり賃金や福利厚生など待遇改善が期待できる。

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