積水化学「ペロブスカイト太陽電池」量産化の勝算 次世代エネルギー技術普及へ国が全面支援

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すでに用途開発にも着手している。

積水化学では大阪本社が入居するビルで、国内初となるフィルム型のペロブスカイト太陽電池を屋内の外壁に装着した。大阪・関西万博では、バスターミナルから会場に向かう通路に設置した、バス停留所の雨よけの屋根にペロブスカイト太陽電池を設置した。

東京国際クルーズターミナルの柱への設置事例(提供:積水化学工業)

東京都の下水処理施設や港湾施設、東海道新幹線の防音壁での設置といった取り組みも進められている。

2025年1月に設立される政策投資銀の出資を受けた新会社は、製品設計や製造、販売など中核的な役割を担う。基本的な技術は積水化学が担うとともに新会社に貸与し、新会社は施工や販売のノウハウを確立し、公共施設や商業施設、オフィスビルなど幅広い分野に普及を進める。

「今回の事業化決定を踏まえた生産ラインは2027年度に量産を開始し、2030年度のギガワット級の生産に向けて第2、第3ラインの増設を検討している。装置メーカーなど独自技術を持つ企業の出資受け入れについても前向きに考えていく」(積水化学の上脇太・代表取締役専務執行役員)

日本の製造業復活の試金石に

積水化学は本格普及に向けて、オールジャパンでの普及体制構築を進めていく。

「2030年時点で1ギガワットの量産体制が確立できれば、原料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルベースで見て、シリコン系太陽電池と同等のコスト水準を実現できる。2040年には太陽電池本体の価格でも同レベルが可能だ」(森田氏)

G7広島サミットでのペロブスカイト太陽電池の展示(2023年5月、提供:積水化学工業)

これまで日本企業は、シリコン系太陽電池や、液晶、有機EL、リチウムイオン蓄電池といった多くの新技術において、技術開発ではリードしながら、本格普及のフェーズで中国や韓国勢に敗退してシェアを失うという負けパターンを繰り返してきた。積水化学の加藤社長は「われわれの技術は簡単にまねできない。同じ轍を踏まないように慎重に進めていく」と説明する。

ペロブスカイト太陽電池の量産化は、日本の製造業復活の試金石ともなる。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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