本気?名古屋城「木造復元」プランが急浮上 河村市長が旗振り、復元CGを本邦初公開!

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また、工事費は耐震補強の29億円に対し、木造復元なら270億円から400億円ほどの試算。河村市長はその3分の1程度を市民債の発行で賄うというが、減税を続ける市財政の中では決して少なくない負担だ。

建て替えによる経済効果の試算もまだされていない。そんな状況から、市長会派である減税日本の市議が4年前より半減した議会も、市民オンブズマンなども厳しい目を注ぐ。

木造復元を望む市民は15.3%

9月15日の市議会本会議で、市長は木造復元事業費の概算や工期を明確にした上で、市民に意向を聴くアンケートを実施する方針を示した。ただ、インターネットを使ったアンケートは昨年度も市が行っており、木造復元を望む回答はわずか15.3%、現状で耐震補強や改修を望む回答が71%だった。回答数は447人と少ないが、少なくとも市民レベルで木造復元への機運が盛り上がっているとは言いがたい。

これは東京や、同じく木造再建を目指す神奈川県の小田原城などに対し、再建を主導するNPOや市民団体が名古屋にないことも一因だろう。それでも、独自に「復元CG」をつくる市民も現れてきた。市内の建築設計士で中部大学などの非常勤講師を務める川地正数さんだ。昭和実測図を基に、コンピュータ上で木組みを忠実に再現。城の内部を歩き回るようなアニメーションは関係者向けの講演会などで披露したことはあるが、インターネットでの一般公開は本邦初になるという。

「本丸御殿が木造で復元できるのに、天守がコンクリート造のままでいいのかという疑問から、誰に依頼されたわけでもなく個人で作成した。今のコンクリート天守とは天井高や雰囲気がまったく違うことがわかっていただけるのでは。これで『木造都市』の復権に向けた市民の機運が高まればいい」と川地さんは話す。さて、皆さんは「本物」を見たいだろうか?

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関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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