本気?名古屋城「木造復元」プランが急浮上 河村市長が旗振り、復元CGを本邦初公開!
いずれ大規模な再建は避けられない。国が特別史跡に指定する名古屋城に対し、文化庁は「建て替えるなら本物に近づけるべきだ」という方針を示す。ならば「本物の木造で」という声がわき上がり始めた。それを増幅させているのがほかでもない、河村市長だ。
「やっぱり本物の木造でにゃあと。竣工式は2020年の5月14日で」と昨年ごろから公に言い始めた市長。5月14日は戦中の天守消失の日付、2020年はもちろんオリンピックの年だ。五輪に向けてさまざまなプロジェクトが動く東京には、1657(明暦3)年の大火で焼失した江戸城寛永度の天守を再建しようという動きもある。そんな「お江戸」への対抗心を燃やす市長の切り札が、尾張名古屋の城復元というわけだ。
「2020年までにできる」市長の根拠は
それにしても、本気ならスケジュールはすでに5年を切っている。市長の構想にどれだけ現実味はあるのだろうか。
複数の建設、木材業界の関係者に聞くと、「今から木材を調達して間に合うのか」と焦る声の一方で、「本丸御殿と違い、天守閣はそれほど太くて立派な木はいらない」「形さえ造ればいいなら早い」という声も聞かれた。実際、初代の天守閣は3年足らずで完成した。昭和初期からの実測調査で詳細な木造図面や内観写真が残っているのも強みだ。
こうした事実が河村市長の楽観論を支える。市長は昨年から非公開の検討委員会を開いて、専門家に工期などを検討させてきた。ただし専門家は「当時は幕府の命による『国家プロジェクト』としてやったから3年で出来た。時代が変わり、今は市民がやれと言ったら出来なくはない。問題は市民がその気になるかどうかだ」とも指摘する。
技術的にも、400年前とは明らかに状況が違う。現在のコンクリート天守を撤去した場合、その重さがなくなった反動で石垣内の基礎が浮き上がり、安定するまでにどれほど期間がかかるかわからない。このバリアフリーの時代に何の昇降装置も誘導路もなくていいはずはなく、「本物」とのバランスでどこまで許容するかの議論にも間違いなく時間を要するだろう。
市当局は6月、耐震補強と木造復元の費用対効果を検証した昨年度の調査結果を市議会に報告。いったん耐震補強でしのいで木造復元しようとしても、技術を受け継いだ大工や適切な国産材の確保が将来的に難しくなると予測し、早期の木造復元が適当だという結論を伝えた。しかし、その工期は解体工事などに3年、木造復元に6年、石垣修復などを含めると「17年半」かかると試算。2020年までに、という市長の掛け声とは大きくかけ離れていた。
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