世界一、寄付しない日本人が損していること カリスマ投資家がやさしく教える経済の本質

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投資を英語で表記すると、「invest」(インベスト)です。

つまり、「ベスト(衣類)を着用する」ことであって、「身につける」という概念です。一方、日本語はどうかというと、「投資」とは「資本を投げる」。身につけるとは反対の概念ですね(この話は草食投資隊の渋澤健さんから聞きました)。

• 「invest」…身につけるイメージ

• 「投資」……手放すイメージ

なぜこんなことになったのでしょうか。

日本人は、1万円の投資をすると、「1万円が手元から消えてしまった」と喪失感に痛みを覚えます。なぜなら、日本人が「現金主義」だからです。投資に不安を覚えるのは、ポケットや財布の中から「現金」がなくなってしまうからです。

日本人はアメリカ人に比べ、寄付をしません。日本人の寄付の金額は、「年間で、1人当たり約2500円」だといわれています。一方、アメリカ人の年間平均は、13万5000円です。毎月1万円以上寄付していることになります。

公共経済学では、世界的に見ても「日本人は公共心がない」と公表されています。経済は互恵関係ですから、寄付も投資もしないということは、社会に貢献しようという意識が薄い、と評価されてもしかたありません。

仮に1万円を寄付することになったとします。

たしかに、あなたの手元から「1万円札」はなくなります。けれど、寄付先との間に共有感があって、心理的につながっていれば、1万円は寄付先に移動しただけで、「減ってはいない」ととらえることもできるはずです。

ところが日本人は、根本的には個人主義なので、「自分のおカネがなくなった」と考えてしまう。寄付よりも、投資よりも、「とにかく貯蓄が大事」と現金を抱えているのが、日本人の気質なのです。

お金持ちになるために「すべき」こと

「おカネを貯めている人」の心の中を覗いてみると、

「おカネが増えている状態が幸せ」

「手元から現金がなくなるのが怖い」

という気持ちが見て取れます。

株式投資に消極的な人の多くは、「現金」が大事なのであって、「株券」を資産だと認めていません。世界的に見ても、この傾向はめずらしい。アメリカ人も、中国人も、韓国人も、株券を資産だと考えています。

なぜなら、株は、会社の価値をそのまま体現しているものだからです。世界の「大金持ち」と呼ばれる人たちは、「現金」を持っていません。現金を持っていても、おカネは働かないからです。

おカネを寝かして大金持ちになった人は、ひとりもいません。アメリカ・フォーブス誌が発表する「The World's Billionaires(世界長者番付)」にランクインした人の中で、現金を何兆円も持っている人はいません。資産の99%は株や不動産です。ソフトバンクの孫正義社長も、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正社長も、資産の多くは株です。

本物の「お金持ち」とは、「おカネ(現金)を持っていない人」のことを言います。

「お金持ち」とは、「株持ち」のことです。

本物のお金持ちになりたかったら、現金を貯めずに、成長する会社やあるいは、不動産に投資するしかありません。お金持ちになりたいと思っているかぎり、お金持ちにはなれません。現金をつかんで離さない人は、お金持ちにはなれないのです。

藤野 英人 投資家。レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長CEO&CIO

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ふじの ひでと / Hideto Fujino

1966年富山県生まれ。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年に独立しレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。とくに中小企業株および成長株の運用経験が長い。「お金」や「投資」を通して、株式会社や日本社会、世界経済のあるべき姿を模索し続けている。教育にも注力しており、東京理科大学上席特任教示、叡啓大学客員教授、淑徳大学地域創生学部客員教授も務める。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)ほか多数。

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