外交交渉路線に転換したウクライナの胸の内 2024年夏から始まっていた停戦に向けた模索

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こうしてみると、今回の外交解決路線への移行はゼレンスキー政権内部で2024年夏の段階でくすぶっていたもので、この迷いの気持ちに対し、トランプ政権の再登場が最終的に戦略変更の後押しをしたという構図が浮かび上がってくる。

また今回のゼレンスキー氏の全占領地武力奪還の断念発言の背後には、ウクライナ戦争は2025年末までに終了するとゼレンスキー氏が期限を切っていたこともある。

温存していた若者を復興へ

これ以上戦争を長引かせると、その余りに大きい人的損失により、ウクライナの持続的発展が不可能になるとの危機感があるからだ。

アメリカのバイデン政権が最近、現在25歳以上という徴兵年齢を18歳まで引き下げて兵力を増やすことをウクライナに提案したのに対し、ゼレンスキー政権が強く拒否した。この背景にもこうした危機感がある。

ゼレンスキー氏としては、2025年に何らかの形で停戦が実現した場合、温存した24歳以下の若者を国家再建に回したいとの狙いがあるのだ。

一方でゼレンスキー氏が徴兵年齢の引き下げ要求を拒否した背景には、別の大きな理由がある。これまでウクライナが強く求めてきた武器供与に対し、一貫して供与時期を遅らせ、小出しにしか応じて来なかったバイデン政権への強い不満があるのだ。

アメリカは2024年11月半ば、ウクライナが承認を求めていたアメリカ製の長射程地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)によるロシア領内への攻撃をようやく容認した。停戦を急ぐトランプ氏の再選が決まり、東部でのロシア軍の攻勢が激化した後、である。

ゼレンスキー政権からすれば、「何をいまさら」という感じだった。そんな中、徴兵年齢の引き下げを提案してきたバイデン政権には強い反発の念があったのだ。

トランプ次期政権による停戦仲介構想は本稿執筆時点で、まだ最終的に固まっていない模様だ。仲介が本格的に動き出すのは2025年に入ってからとみられる。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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