財務省の「巧さ」が財政拡張派にスキを与えている 大型補正でも財源バッファーで国債発行を抑制

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そもそも、大型の補正予算を前提に議論が進んでいる可能性が高い。

国民民主党の玉木雄一郎氏は、今回の補正予算の財源として、当初予算からの税収の上振れ(約3.8兆円)、税外収入の上振れ(約1.9兆円)、既定経費の削減(約1.6兆円)を合わせて約7.3兆円あることをもって、「103万円の壁」を大きく引き上げる所得減税のための財源は十分にあると主張している。

むろん、事前に税収を正しく予想することは難しく、多少は余裕を持って見積もっておくことは財政運営上必要だろう。特に、コロナ後の経済の動きは予想が難しい。

しかし、補正予算の段階でこれだけの財源が用意されているとなると、当初予算の段階で補正予算を意識し、余裕を持って予算を作っていたのではないか、という疑いをもたれてしまう。玉木氏の「取りすぎた税金を国民にお返ししないと」という主張に説得力が出てくることになる。

補正を前提にした当初予算で国債増発

税収が上振れているとはいえ、依然として財政収支は赤字である。したがって、財務省が余裕を持って予算を作っているということは、必要以上に国債を発行しているということである。

仮に当初予算の段階で税収の見積もりを大きくしておけば、国債発行額を減額できたはずである。このように考えると、財政健全化姿勢が強すぎて批判されることの多い財務省ですら、「財政規律がゆるんでいる」と言える。

以上を整理すると、政治主導の「規模ありき」の経済対策・補正予算が常態化してきたことで、財務省はそれを前提に当初予算を策定し、結果的に必要以上に国債が増発されてきた可能性がある。

財務省は伝統的に緊縮財政だと批判されることが多いが、その緊縮財政のスタンスもぶれていると、筆者は考えている。その結果、さらに補正予算が大型化するという悪循環を止めなければ、必要以上に大きい補正予算と財政の悪化は止めることはできないだろう。

短期的な国債市場の安定が重視されることで、財政規律が弛緩している可能性が高い。

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