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実写化に物議【推しの子】ドラマが意外と好評な訳 ビジュアル再現度が全て…ではない!

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  • 白川 穂先 エンタメコラムニスト/文筆家
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ただ個人的に、批判の要因をより表していると感じたのは、ビジュアルの話題よりも物語冒頭のこんなシーンだ。

実家が雛人形店を営む主人公・五条新菜は、雛人形の衣装作りという「周囲と違った趣味」を持つ自分をひた隠しにし、孤独に高校生活を過ごしていた。

そんなあるとき、お雛様の頭部を手にしているところを、同級生のギャル・喜多川海夢に目撃されてしまう。五条はドン引きされることを直感して焦るが、海夢はその人形を興味深く見つめ、繊細な仕上がりに大感動するのだった。

……つまり、違う世界の住人だと思っていた華やかな同級生が、自分の趣味を見下さず尊重してくれるという、ヒロインのギャップがわかる場面である。

ドラマ版でもこの流れは変わらないのだが、原作ではヒロインが人形に手を触れず見つめているのに対して、ドラマでは人形の頭頂に触れ、持ち上げて眺めるという演出に。さらにその後、人形の顔面を机にベタ置きする見せ方をしてしまったために、粗末な扱いすぎると炎上の火種になってしまった。

この流れを見てふと【推しの子】の「展開を変えるのはいいんです。でもキャラを変えるのは無礼だと思いませんか?」(5巻45話より)という台詞を思い出した。詳細は省くが、メディアミックスの脚本家に対して、原作者が怒りをあらわにするシーンである(ちなみにこの台詞は、議論の結論ではなくあくまで過程で用いられる)。

ドラマ『着せ恋』は、この台詞が言うように「元あったキャラクターの魅力が損なわれる改変」をしてしまったのである。さらには、ヒロインが体現している “人の好きなものをリスペクトし、肯定する”という「作品全体に通底するメッセージ」を取りこぼす表現をしてしまったがゆえに、批判を招いてしまったと言えるのではないだろうか。

“深読み”させるキャスティングの妙

それではドラマ【推しの子】は、上述したような実写化の課題をどのように乗り越えたのか。先ほど引用した台詞に応えるかのように、「構成は原作から変えても、キャラクター像は死守した」ことで実写化へのポジティブな評価につなげていた。

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【“キャラ解釈”への不信感をキャスティングによって解消】

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