戒厳令は身内びいき政治が産んだ大統領の乱心だ 攻勢強める野党、内乱罪告発、弾劾罷免の可能性高まる

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2022年5月の大統領選では、共に民主党代表の李在明氏との大接戦の末、僅差で当選した尹大統領。ただ、当選後は周囲に「接戦でも勝利は勝利。自分たちの政策を粛々と進めよう」と話すなど、つねに強気の姿勢が目立っていた。

長らく対日外交の最大懸案だった徴用工問題でも、周囲の強い反対を押し切って、尹大統領が政治決断した。そのワンマンぶりが特徴だった。

にもかかわらず、最近の尹大統領は精彩を欠き、側近には「何かを思い詰めているかのような、心ここにあらずという風」に映った。そんな印象から「弾劾されるくらいなら、自ら職を辞するという判断をする可能性も排除できないのではないか」と述べた。

選んだカードが「非常戒厳」宣布

しかし、尹大統領がまずとった選択は「非常戒厳」の宣布だった。

与党関係者の1人は、戒厳令という常軌を逸した強硬策を「決して安易な思いつきではなく、熟慮の末に導いた尹大統領なりの結論」だったという。だが、仮にそうだったとしても、現実を見ることのない、無責任で独りよがりの判断でしかない。

時が進むにつれ、尹大統領の指示の浅はかさは次々に明らかになってきた。

「非常戒厳」の解除決議案に野党とともに賛成した与党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は12月5日、野党が提出した弾劾訴追案には「(弾劾の)混乱による国民と支持者の被害を防ぐため、(国会で)可決されないよう努める」と、いったんは述べた。

だが、その方針は1日も持たなかった。翌12月6日には新たな事実が判明したとして、尹大統領の「早期職務停止が必要」と述べ、弾劾訴追案に賛成票を投じる考えを明らかにした。

別の与党関係者によると、「新たな事実」とは、尹大統領が情報機関の国家情報院(国情院)の第1次長に対し、軍と協力して韓代表を含む与野党の政治家らを逮捕するよう指示したことだった。第1次長がこれに難色を示すと即、更迭されたという。

国情院の次長はトップの長官に次ぐポストで、第1次長は海外情報を担当する。最近では、欧州を訪ね、NATO(北大西洋条約機構)やEUの関係者らと北朝鮮のロシア派兵問題を協議した。

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