戒厳令は身内びいき政治が産んだ大統領の乱心だ 攻勢強める野党、内乱罪告発、弾劾罷免の可能性高まる
2024年12月3日深夜、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「非常戒厳」の宣布に端を発した混乱は、ますます韓流映画を地でいくような展開になってきた。検事出身で政治経験の浅い大統領が切った、極めて危険なカードは、韓国のみならず、国際社会にも大きな衝撃を与えた。
韓国政府・与党「国民の力」内部でも「なぜ成算のない愚かな判断をしたのか」(与党重鎮)との声が漏れる。ただ、異変の予兆がまったくなかったわけではない。「非常戒厳」を発する前、大統領に近い人物は筆者にこう語った。「あれだけ強気の大統領が最近は何かおかしい」
大統領周辺「何かおかしい」
2024年4月に投開票され、与党の歴史的惨敗に終わった総選挙の後から、政府・与党に吹きつける逆風は、にわかに強まっていった。
尹大統領の就任前から、「最大の弱点」と目されていた妻である金建希(キム・ゴンヒ)氏の疑惑をめぐり、最大野党「共に民主党」を中心とした野党側は攻撃の手を緩めない。韓国メディアも連日、関連記事を伝え、疑惑は拡大した。
2024年11月7日、尹氏は5年間の任期の折り返しを迎えるのに合わせて記者会見を開き、妻の問題について「すべて私の不注意で不徳の致すところだ」と陳謝した。だが、これも疑惑に答えていないとして支持率を回復させることはできなかった。
議会で過半数を握る巨大野党は遠慮なく、2025年度予算で大統領室の機密費を大幅に削ったり、閣僚や検事の弾劾訴追案を次々に可決したりして圧迫を加え、再び金建希氏の疑惑にメスを入れようとしていた。
11月中旬、日本の永田町にあたる国会周辺のソウル・汝矣島(ヨイド)には、すでにきな臭い空気が漂い始めていた。記者会見前後に尹大統領と会ったという側近の1人は筆者に「大統領の表情や反応が、ちょっとこれまでと違う。何かおかしい」と語った。
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