新年相場に備えよう!「2025年注目テーマ」総予習 "押さえるべき要点"を永濱エコノミストが解説

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もっとも、暗い話ばかりではない。来年は賃金上昇率から物価上昇率を引いた実質賃金が安定的なプラスに転じる可能性がある。国内では、人手不足から賃金上昇圧力の高い状態が恒常化し、来年も賃上げの流れが続きそうだ。一方、物価上昇率は落ち着く方向にあり、2%を下回るかもしれない。

Q 望ましい経済政策の方向性は?

実質賃金のプラス転換が実現するだけでは、消費は増えないだろう。マクロ賃金(雇用者報酬)と消費(家計最終消費支出)の関係では、2015年にマクロ賃金が1%増えると消費が1.4%増えたが、昨年は0.7%しか増えない関係にある。賃金増加の消費刺激効果が10年足らずで半減したのだ。3分の1が年金のマクロ経済スライドの悪影響を受ける無職世帯なので、節約志向を覆すのは容易ではない。

デフレとは物価下落が2年以上続く状態を指すが、政府はデフレ脱却宣言を見送り、「デフレではない状況」と表現する。実際はデフレを脱しているが、国民のデフレマインドが残っているためだ。

しかし、手取りアップにつながる「年収の壁」引き上げが実現して可処分所得が恒常的に増えれば消費マインドも上向く可能性がある。賃上げの消費刺激効果も再び上昇していくかもしれない。

インフレで政府は税を取りすぎてしまっているため、減税は理にかなっている。効果が大きいのは所得減税より消費減税だ。日本でも、お金を使うと得をする制度で消費を喚起する方策を検討してはどうか。

経済格差は広がりそう

Q 賃上げで経済格差は縮小するのか?

経済格差は広がりそうだ。物価上昇は雇用されている人にもされていない人にも負担。現役世代は賃上げの恩恵を継続的に受けられる可能性があるが、雇用先によって賃金上昇率に差があるのが実情だ。

リタイア世代にはそもそも賃上げが及ばない。公的年金はマクロ経済スライドが適用されるため、賃金や物価の伸びほど支給額は増えない。「賃金と物価上昇の好循環」が続くほど、現役世代とリタイア世代の格差も広がっていくだろう。資産形成や家計管理でしっかり備えておきたい。

(聞き手:ジャーナリスト 相沢清太郎)

永濱 利廣 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながはま としひろ / Toshihiro Nagahama

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業後、第一生命保険入社。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了、2016年より現職。跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事・事務局長、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。専門は経済統計、マクロ経済分析。著作に『スクリューフレーション・ショック』(朝日新聞出版社)、『男性不況』(東洋経済新報社)等。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事