夏の豪雨でJR石勝線寸断、「代行輸送なし」の顛末 ドライバーを手配できない、懸念が現実に…

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筆者は、石勝線が豪雨被害を受けた翌日9月1日、たまたま札幌駅に居合わせたが、改札前には、石勝線の被災状況が写し出された写真と「帯広・釧路方面の特急列車は少なくても9月2日までは運休します」という掲示が貼り出されていた。

石勝線には、札幌―帯広間を結ぶ特急とかち号5往復と、札幌―釧路間を結ぶ特急おおぞら号6往復が運行されているが、これらの列車は終日運休となっていた。しかし、JR北海道は運休となった特急列車の代行バスの運行を行わなかったことから、帯広・釧路方面に向かう高速バスや釧路に向かう航空便は軒並み満席となり、こうした交通機関を手配できなかった乗客が札幌駅で駅員に詰め寄る姿もみられ、混乱を招いている様子であった。

JR北海道は9月2日、代行バスを手配できなかった理由について、「必要な台数の確保の見通しが立たなかったため」と発表した。災害当日の8月31日には、帯広発札幌行の特急とかち号が、石勝線の占冠駅で発車できなくなり8時間にわたって乗客が車内にとどまった。このときの乗客は125人であったが、このうち80人がJR北海道の手配したバスに乗り、札幌や帯広方面に向かったことから突発的な救済便についてはバスの手配ができた様子であった。しかし、昨今深刻化するバスドライバー不足に加え、2024年度になりドライバーの残業規制が強化されたことから、その後、数日にわたって特急列車の輸送力をバスでカバーすることは難しかったようだ。昨年、2023年8月7日に石北本線が豪雨被害で寸断された際には、その2日後となる9日から旭川―北見間での列車代行バスが設定されていた。

必要なバスは何台?

こうしたことから筆者はJR北海道広報部に対して、今回の石勝線の寸断で必要とされたバスの台数は何台だったのかと質問したところ、報道発表した内容がすべてで個別具体的な内容については回答できないという趣旨の返信があった。鉄道代行バスの考え方は、一般論として「運休となった列車の乗客のすべてを引き受けなくてはならない」「全席指定席の特急列車については、座席未指定券でこれから乗車されるお客様の人数も顧慮しなくてはならない」という考え方があるそうだが、これについて筆者はさらにJR北海道に対して、今回の石勝線の寸断で代行バスが運行できなかったことにより都市間交通に混乱を与えたことは事実であるが、JR北海道はなぜ、一部のお客様でも救済しようという発想を持てなかったのか。

特急列車の乗車直前に切符を買い求めるケースが多い座席未指定券のお客様が、運休の掲示が出ている特急列車にこれからあえて乗車しようということは考えにくいのではないかと続けて質問を行ったところ「仮定の話には回答できない」と返事があり、「なぜ発想を持てなかったのか」という筆者の質問への正面からの回答は避けた。

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