夏の豪雨でJR石勝線寸断、「代行輸送なし」の顛末 ドライバーを手配できない、懸念が現実に…

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石勝線の追分―新得間には、5往復の貨物列車も設定されており、このうち帯広貨物駅に発着するものが4往復、釧路貨物駅に発着するものが2往復で、そのうち1往復が帯広貨物―釧路貨物間の区間列車となっている。帯広や釧路から発送されるものは本州方面への農産品のほか乳製品も特徴で、到着するものは加工食品や宅配便の荷物などが多い。さらに、ジャガイモの収穫期となる9月12日から10月8日までのうち26日間については、帯広貨物―熊谷貨物ターミナル間の臨時貨物列車も1往復設定されていた。

このように石勝線は、旅客だけではなく貨物にとっても重要な路線であるが、今回の豪雨被害では貨物列車の代替となるトラックの手配もままならなかったようで、JR貨物広報室に確認したところ、「4日間でトラック代行できたのは札幌貨物ターミナル駅―帯広貨物駅間で5tコンテナ約130個だった」という。また、この時期の石勝線の輸送量としては、5tコンテナを5個搭載できる「コンテナ車15両から19両編成が多く走行している」ということから、1列車あたりの輸送力は5tコンテナ75~95個となるが、4日間でトラック代行できたのは往復1列車分未満のごく一部の量であった。背景には慢性的なドライバー不足の影響があるようだ。

2023年8月の懸念が現実に……

こうしたことから、この3月31日で廃止された根室本線の富良野―新得間を廃止せず特急列車や貨物列車が迂回できるルートとして整備しておけば、今回のような混乱は起こらなかったのではないかという声も聞かれる。新得町の住民団体「根室本線の復活を考える会」では、同区間の復活を模索する動きもある。

2023年8月に発生した石北本線での災害時は、北見産のタマネギを運ぶ1往復の臨時貨物列車がトラックにより代行輸送されたが、このときの地元紙では「1日1往復の貨物列車をトラックで代行輸送すると、約20台のトレーラーが新たに必要になるといい、こうした事態が長期化するとドライバーの確保に影響がでる可能性がある」と報道されていたが、今回の石勝線の寸断ではこうした懸念が現実となった。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。BSフジサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」番組監修。

 

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