スシローが急拡大「デジタル回転レーン」の"凄さ" 消費者にも歓迎されるDX化の好例になっている

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あるいは、セブン‐イレブン。最近は「上げ底弁当」報道などで注目を浴びることが多いが、これに関する記事を書いたとき、「レジも使いにくい」というコメントが何件もあった。セブンのレジは半有人レジで、その操作に戸惑う人が少なくないのだ。

店側にとっては、作業効率の軽減につながるが、顧客側に立つと本当にメリットになっているのか、疑わしいところでもある。

セブン・イレブン
「上げ底に思える弁当」や「不自然な容器の色塗り」などが先日、話題となったセブン。その中で、不親切な半有人レジへの不満の声も湧き上がっていた(筆者撮影)

店側と顧客側の双方が得をする形でDX化を進めなければ、それはうまく進められないのである。単に「はやりだからデジタルっぽいものを取り入れよう」とか「デジタルで人員コストをカットしよう」というだけだと、それは総合的に見て失敗してしまう可能性も大きいのだ。

AIやDX分野で多くの著書を持つ、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授の石角友愛は『いまこそ知りたいDX戦略 自社のコアを再定義し、デジタル化する』の中で「DXとは、オペレーションをデジタル化することや、デジタルツールを導入することではない」と言い、その本質は「『会社にとってのコア』を再定義し、それをデジタル化すること」だと書く。

つまり、本来あるべきDX化とは、顧客への価値となるその会社の「核心(コア)」を見極め、それに通ずる部分をデジタル化し、その会社の価値を高めるべきだというのだ。デジタル化はその企業の顧客価値を見極めたうえで慎重に検討しなければならないことでもある。

デジローはスシローの「ワクワク感」を高めている

そう考えたとき、スシローにとっての「コア」とはなんだろうか。ここからは私の推測になるのだが、スシローの場合、その「コア」はやはり「ワクワク感」のような体験価値になるのではないだろうか。

『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』書影
『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

というのも、技術の進歩によってすしの「安さ」「おいしさ」はさまざまな形でかなえられるようになってきたからだ。例えば、「魚べい」は「回らないすし」でありながらも安価であることを売りにしている。また、北海道の「根室花まる」や「トリトン」や千葉の「すし銚子丸」など、素材の味を売りにした回転ずしチェーンは素材の新鮮さやおいしさにこだわっている。こうした競合がひしめく中、スシローなどの大衆回転ずしチェーンの価値は「楽しい」という空間価値が大きなウェイトを占めると思う。少なくとも、そこで差別化をしなければ、その他ひしめく競合にやられてしまう。

その意味で、この「ワクワク感」を演出するDXこそが「デジロー」であり、まさにその顧客価値を増幅させる方向で、このDX化は成功しているといえるのではないだろうか。

デジローは、これから全国規模での拡大を遂げていく。そのため、この試みが全国規模で定着するかどうかは未知数だ。しかし、企業の価値向上としてDXを適切に用いているという点では、極めて注目に値する事例だと思うのだ。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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